公益財団法人テルモ生命科学振興財団

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

アイデアを書き留める「発明手帳」。芸人のネタ帳と一緒ですね

———開発のアイデアはどこから生まれるんですか?

手を動かしていれば何となくアイデアが浮かんでくるものです。発明もそうかもしれませんが、アイデアってとにかく絵に描くんですよ。そのために、ぼくが書き留めているのが「発明手帳」。年に何十冊にもなります。どうでもいいアイデアがたくさんあり、使えるのは数えるぐらいしかないけれど、とにかく記してあとで眺めてみます。絵に描いては理論計算しながら、次のネタに挑戦するんです。芸人のネタ帳と一緒ですね。
たとえばの話をしましょうか。階段を上っていてお年寄り用に付いている手すりが使いづらかったとしますよ。それならこの手すりをもっとこっちに付ければいいじゃないかとか、考えたことをいちいち書き留めていくうちに、手すり自体が光った方がわかりやすくていいかなというアイデアが浮かんだとします。全体を光らせるにはどうすればいいか。LEDのチップがこことここに入って、見やすくするためにはどうしたらいいか。発電はリチウムポリマーにしようか、というのでアマゾンで検索すると、リチウムポリマーは今、100円ぐらいで手に入る。じゃあ、こっちが光ったら次の床も光るように、通信するようにしたらどうか──次々に発想が広がっていくんです。

発明手帳。けっこう分厚い

———ふだんの生活で、これは、と思うようなことがいっぱいある?

生活をしていると不便だな、不自由だなと感じることってたくさんあるじゃないですか。そこから発明が生まれるんですよね。
患者さんもそうなんじゃないでしょうか。病気して、不自由を感じるから医療ってあるわけですよね。風邪を引いて熱が出て少し寒いから病院に来る。ウイルスじゃなくて症状をなんとかしたいんです。効果の定まらない風邪薬よりも、そもそも、寒いのをなんとかしてあげればいい。そういうことっていっぱいありますね。医者が薬を飲めというと患者さんは飲んでくれるけど、じゃ、その薬がどう効いているんでしょうか? こういう疑問が山ほどあります。

———部屋の中に山のように部品が積み上がってますが、用途は決まってるんですか?

素材を過剰に買うのが趣味なんですよね(笑)。用途なんて決めていたらキリがないですよ。
たとえばあるシステムでポリマー素材がほしかったとします。いろんなメーカーで売っているポリマーを、ひたすらネットでサーチして、最初から何種類も買うんです。ホームセンターにあるような1個数百円のものばかりなので、コストは安いです。で、トライアンドエラーを繰り返しつつ、最適部品を見つけていくんです。
そんな中で最近気づいた提案があります。「顕微鏡ってやわらかくできないの?」と。人間の体って柔らかいでしょ? だったら顕微鏡だって柔らかいもののほうが体にあたっても痛くない。プヨプヨフニュフニュしているけどちゃんと生体内を撮影できますというのを今、つくろうとしています。なぜ、ポリマーの樹脂かというと、柔らかいレンズになるからです。ガラスのレンズよりきれいに撮れるので驚きます。

柔らかい顕微鏡用に集めている樹脂。たとえば消臭ビーズなども、成分にもよるが、水につけておくだけで、自己組織化して大きなレンズとして使えるようになるものもあるんだとか。

———これからやってみたいことは?

うーん、とくに決めてないんです。ただ、有機化学合成とか、高分子化学とか、繊維とか、まだ知らない業界っていっぱいあるんですね。そういうところを全部しらみ潰しにしていきたいと思いますけどね。

———8Kの生体イメージングで、こんな可能性があるっていうビジョンとかは?

高尚な医学とかには全然興味がないし、何かの遺伝子1個見つけて世の中が変わるとか、ぼくは全然そんな夢物語を信じていないんです。ホントに愚直に目の前にある技術、使える技術をインテグレーションして、実際に使える形にして、生物学、医学みたいなものにアウトプットする、それを繰り返しているだけです。広い視野で、高解像度を得ようと思ったら、どうやってもセンサーはCMOSになります。そのなかでの提案です。
でも、いまの高校生が成人するころには変わっている技術だと思うんです。ぼくがやっているのは、ライフサイエンスの中でも寿命の長い技術じゃなくて短い技術ですね。今の時代に、今の技術、です。

———研究の一方で、小学生を対象としたモノづくり授業を積極的に行っているとうかがいました。

出張授業とか実習とか楽しいですよ。小学校の中高学年の子供たちを2時間ぐらい預かって、自由にモノを作ってもらいます。たとえばラジコンやミニ四駆を買ってつくらせるんじゃなくて、部品を渡してゼロからつくるんです。動くサーボモーターがあったとすると、それでロボットをつくらせて、ロボット同士を戦わせて勝負するといったことも可能です。図面があってその通りにモノをつくるというのは世の中にたくさんあるので、好きなように工具を使わせて、図面なしで自分で工夫してつくってもらう。
子供って、けっこう予想外のものをつくるのでおもしろいですよ。最近は工具なんか使ったことないという子供が多くて、ドライバーを使えない子もいます。押して回すことができないんですね。正しいドライバーの使い方を教えると、短時間で覚えてくれます。
大学って超ハイテクなところと思っているみたいで、敷居が高いと感じているのかもしれませんが、実際はローテクですよ。小学生から高校生まで、大歓迎です。どうぞいらっしゃい。実際、ぼくに直接連絡してやってきた子もいますから、大丈夫ですよ。

———若い人へのメッセージをお願いします。

ぼくのように、好きなことをやっていても、なんとか生きていけるって、日本って豊かだなと思います。せっかくこんなに豊かなんだから、がむしゃらに正解を目指して生きていくんじゃなくて、ある意味適当にやっていいと思うんですよね。だって、今の日本、食いっぱぐれるということはないじゃないですか。気候もいいし、地べたで寝たって死なないし、困窮して「すみません、助けてください」と言えば何とか助けてもらえる。そう考えたら、どんな自由なサイエンスだっていいじゃないですか。
最近、会社員よりもユーチューバーに憧れる若い人が多いっていうけど、ユーチューバーは好きなことを自由にやってるだけですよね。その自由さ、不確定さ、不安定さこそがおもしろいんでしょう? だから、若い人には自分がやりたいことを存分にやってほしいな。

(2018年7月1日更新)

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