公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

一浪中は、予備校にも行かずカラオケ三昧

———大学受験はどうでしたか?

実は私、二浪しているんです。最初の受験では、記念受験的に2校受けて、案の定どちらも落ちました。浪人して大宮にある予備校に通ったものの、毎日通っていたのは、予備校ではなくてカラオケボックス。朝「行ってきまーす」と家を出て、宇都宮から大宮まで新幹線で行って、朝カラオケって安いので朝の10時ぐらいから夕方4時ぐらいまで、カラオケボックスでみんなでワーワーやって帰ってくるという生活をしていて、結局、浪人生なんだけど予備校にはほとんど行ってなかった。もちろん親には内緒でしたが、模試も受けてなくて、志望校をどこにするかを判断するため、「模試の結果を持ってこい」と言われたとき、行ってないことがバレてしまいました。

母は大和撫子を絵に描いたような女性。中学の反抗期のころ、「あなたのような女にはなりたくないっ!」という暴言を吐いたことがあるが、「あなたのような素晴らしい女性にはとてもなれません」の間違いであることに気がつくまでにそう時間はかからなかった。いつか謝ろうと思って30年が過ぎた。

———ご両親はびっくりしたのでは?

普通は「今度、模試いつなの?」とか「何点取れたの?」って聞いてくれると思うんですけど、子供を信じる方針なのか、最後の最後まで放任だったんですね。結局、まるで勉強してなかったことが分かり、「一番偏差値の低い大学を受けてみろ」と親に言われて、ここなら受かるだろうと思った地方の工学部を受けたものの見事に落ちました。

———えーっ、それは大変ですね。

自分では、勉強してなくたってそこには受かるだろうと思っていたのに落ちてしまい、自分はバカなんだということに初めて気づくわけです。小学校、中学校はどちらかというと成績優秀だったんですよね。最小限の努力で、テスト前にチョチョッとやれば何とかいい点が取れる。高校のときも、最初は一番頭のいいクラスにいたんですけど、遊んでばかりいましたから卒業時はほとんど下の方でした。それでも自分はバカじゃないからと思っていたのが、受験に失敗してようやく気づきました。

———ご両親の反応は?

落ちた時点で父から、「1週間以内に就職先を探せ」と言われました。「学問というのは学問をしたい者がやるべきもので、学問したくない者は働いて金を稼いで生きていけ。1週間以内に就職先を探せ」と。

———さすがにそれは……。

そこで初めて現実を知ったというか、今度こそ真剣に勉強しようと思いました。父からは「あと一浪だけだぞ」と言われて、二浪目は東京にある全寮制の予備校へ。その予備校に行くときに実家から駅まで父がクルマで送ってくれました。途中、父が笑いながらもわりと真剣に言ってくれた言葉が、「受からなかったら帰ってこられないから、実家はこれが最後になると思えよ」ということでした。あっ、親は本気なんだと初めて気づきました。
のちに父が、「今まで自分の信念を曲げたことがないけれど、一浪だけと言ったのを曲げて二浪させたのは、娘かわいさからだった」って言ってましたね。

———お父さまのお気持ち、よく分かりますね。

多浪する人の親御さんが「困りました」と相談にくることがありますが、そういうときには自分の例を思い出して、「生活の面倒をみているので子どもは甘えるわけだから、働く口を探すように仕向ければ子どもは正気に戻ると思います」とアドバイスしています(笑)。

———それで真剣に勉強して歯学部に?

偏差値が20以上、上がったと思いますね。猛勉強しましたよ。28人ぐらいしかいない全寮制の予備校で、いい先生方が揃っていてよく面倒をみてくださった。おもしろいように成績が上がっていって、ようやく歯学部に合格できました。そこで初めて、欲しいものを手に入れるには努力しなければだめだということを知ったわけですね。だから勉強というものをちゃんとやったのは浪人の二浪目からという、まったくの出遅れタイプです。

二浪目のときの親友・伊佐治君と予備校にて

———猛勉強して入った大学では、空手にのめり込んだとか?

日本の武道をやりたいなと思ったんです。大学に武道系の部が6つあって、空手、柔道、剣道、少林寺拳法、合気道、日本拳法とあった中で、いろいろと考えて残ったのが剣道と空手でした。でも何かあって身を守るとき、剣道は竹刀がわりの棒がないと戦えない。有事の際に棒を探せなかったらどうにもならないと思ったので、道具不要の空手がいいんじゃないかと空手を選んで、やり始めたらハマリました。部活だけじゃ足りなくて道場にも通って、5年生の夏まで、月・水・金が部活で、火・木・土は町の道場で稽古しました。

———すごい熱中ぶりですね!

そうなんです。ハマるとできる子なんです(笑)。空手部のメンバーとは、今も家族みたいに付き合っていて、何か困ると先輩・後輩が頼り合うみたいな、私の帰る場所だと思っているほどです。

全日本歯科学生総合体育大会にて(前列右端)

大学を卒業してからも空手部の仲間とは切れない縁 (2列左から4人目)

———空手のどこがおもしろかったのでしょう?

自己追求みたいなところでしょうね。武道ってみんなそうだと思いますが、体を鍛えるというより、精神を鍛えていく。限界って簡単に塗り替えることができる。その経験ってけっこう大事で、人より根性があると今は思っていますが、それはたぶん空手をやったおかげです。