中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

DDSを支える4つの技術

さて、細胞のエサであるタンパク質やペプチド、生理活性物質などを細胞に届けるためにはどんな技術が必要なのだろう。
私たちのからだの70%は水だから、そのまま投与しても、濃度が薄くなるうえ不安定になって、めざす細胞に到達するまでに栄養がなくなってしまう。エサの与え方を工夫しなくてはならない。
「まず、体内で不安定なエサを安定化させたり、水に溶ける状態にしなくてはなりません。油など水に溶けないものを溶かすときは石けんを使いますが、それと同様に、からだに悪影響を与えない石けんを開発するわけです」
目的地の細胞にたどり着くまでにはいろいろな関門がある。口から入った場合は、腸から吸収されて血管に入っていくが、そのときに、組織の壁や血管の壁、細胞膜など、さまざまな生体バリアをすり抜ける必要がある。
そして、当然のことだが、めざす細胞に間違いなく到達するためのターゲティング技術。
「誘導ミサイルみたいなものですが、これも正常な細胞と病気の細胞はどう違うか、血管の状態はどうかなどからだの仕組みがわかっていないと設計できません」
こうして目的の場所に到着したときでも、一度に食べ物がなくなってしまってはダメなのだ。元気になるまでの間、少しずつ食べさせてやる必要がある。
「生物活性はそのままに、分解吸収性のあるカプセルやゲルなどに入れて、徐々に中の物質を放出させていく『徐放化』の技術が重要です。材料の分解性によって体内にとどまる時間をコントロールするわけですね」

DDSの基本的な技術

(1)安定化・水可溶化
イラスト:安定化・水可溶化


(2)生体バリアの通過促進
イラスト:生体バリアの通過促進


(3)標的細胞へのターゲティング
イラスト:標的細胞へのターゲティング


(4)徐放化(徐々に放出)
イラスト:徐放化(徐々に放出)

こうした、(1)安定化・水可溶化、(2)生体バリアの通過促進、(3)標的細胞へのターゲティング、(4)徐放化の4つがDDSの基本技術だ。お皿で運ぶものが、がん細胞をやっつける薬であれば抗がん剤、免疫細胞を元気にする薬だったら予防薬、ターゲットを光らせる機能を持たせて診断をサポートする場合は診断薬、移植する幹細胞を元気にするための栄養なら再生医療のためのDDSというわけだ。

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