中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

再生医療を志すなら工学部へ

バイタリティあふれる田畑先生のこれからの目標のひとつは、いま治療するのが困難とされている肝硬変や肺線維症などの病気をなんとかしたいということ。いったん発症すると治療するのはむずかしいが、からだの自然治癒力を高めることによって進行を抑制あるいはストップさせることはできるのではないか。それと早期診断のための分子イメージング技法の開発。目的の組織や細胞のところに診断薬をもっていく技術で、これもDDS技術で進展が期待できる分野なのだ。
「そして、10年先、20年先の次の医療のためには、からだの中の細胞の状態に関する知見を深めていく必要があります。細胞学や生物医学の研究の進歩のためにDDSが活躍する舞台は大きいんです」

そのために、中高生にぜひ呼びかけたいのが、将来、再生医療の分野の研究をしてみたいと考えているなら、まず工学部を選んで、材料学や応用化学を学んでほしいということ。
「これまでのお話でおわかりでしょう?再生医療を進歩させるのはモノづくりの技術だっていうことです。たとえば、人工血管は何でできていると思いますか?あれは、みんなが清涼飲料水を飲むときに使っているペットボトル、材料名で言うとポリエチレンテレフタレートでできているんです。同じ材料でも、作り方によって硬い透明なボトルになったり、血管のようにしなやかなチューブになったりします。これはモノづくり技(わざ)です。それから、人工血管の中で血が固まらないようにする技術も、メガネが曇らないようにする技術も、衣服などの静電気の防止の技術も全部同じ、どの材料にどの材料を組み合わせるのか、どのような調べ方をするのかが違っているだけ、用いる技術は同じです。からだの組織がくっついたり、離れたりの基本原理は化学結合ですよ。化学を学べば、分子とどの分子がどういう相互作用を持っているのか、分子の並び方でどんな性質を持つのかの基本原理がわかります。医学部では学べない分野なんですね」

田畑先生

その上で生物学を学べば、からだのことをより深く理解できるだろう。
「DDSは研究のフロンティアが広がっている分野。中高生に期待しています」

(2011年1月更新)

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