中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

「長寿遺伝子」が見つかった?

老化や寿命に関する研究は、実に多様な角度から進められている。そのひとつで、いま話題を呼んでいるのが、生物の老化を防止し寿命を延ばすとされる長寿遺伝子だ。この遺伝子を活発に働かせてヒトに応用すれば、人類はこれまで以上に長生きできるのではないかというので、医療関係者、生命科学研究者、あるいは製薬会社などが大いに注目している。

現在、長寿遺伝子といわれるものは数種類発見されているが、そもそものきっかけは、酵母菌の研究者として知られるマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授が提唱したものだった。博士は通常の栄養を与えた酵母菌よりも、栄養を少なく与えた酵母菌の寿命が延びていること、長寿酵母では「サーツー遺伝子」が活発に働いていることをつきとめた。このサーツー遺伝子は酵母菌だけでなく、ショウジョウバエ、線虫、魚、さらにはヒトにいたるまで、地球上の多くの生命が持っていることもわかってきた。

ヒトにも、サーツー遺伝子のような長寿遺伝子が7つあり、それらを「サーチュイン遺伝子」と呼んでいる。このサーチュイン遺伝子は、飢餓状態のときに働く遺伝子で、現在の日本のように食物に困らない時代には眠ってしまっているんだそうだ。ところが、飢餓状態になったり、摂取するカロリーを抑制してやると活発に活動し、老化を予防してくれると考えられている。

サーチュイン遺伝子とは別に、白澤先生は線虫の長寿遺伝子の研究を行ってきた。

「線虫は体長が1mmで、約1000個の細胞からなる生物です。実験室で飼育しやすく、寿命が3週間とすぐに結果が出ること、細胞を生きたまま顕微鏡で同定できること、全ゲノムの塩基配列がわかっていることなど研究上のメリットが大きいことから、1990年代に入って多くの研究者が線虫を使って寿命に関係する遺伝子の研究を始めました。そして、1997年にハーバード大学の研究チームが、ある遺伝子に傷がついていることによって、通常の線虫より寿命が2倍になった長寿命変異体の線虫から責任遺伝子を同定し、『ダフ2』と名づけました。さらに、カナダのマックギル大学の研究チームが、ミトコンドリアが十分にエネルギーをつくれないために寿命が1.5倍になっている長寿変異体の責任遺伝子を発見し、『クロック1』と名づけました」

線虫

線虫
大腸菌を求めて寒天培地の上を優雅な曲線を描いて動くことから
エレガント線虫と呼ばれている。

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