中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

細胞でできたロボットをつくりたかった

ところで竹内先生が機械工学と生命科学を結び付けて研究するようになったのはなぜだろう。
「若い頃から『ロボコップ』や『ターミネーター』などの映画が好きで、もともと生体と機械の融合にはすごく興味があったのです。そこで大学では昆虫規範型ロボットの研究を行っている研究室に所属しました。たくさんの昆虫を観察してその本質を見つけ出してロボットに応用するわけですが、昆虫を観察すればするほど昆虫のすごさを実感したのです。そこで、昆虫に似せてロボットをつくるのではなく、昆虫そのものを機械で制御するアプローチがいいと、卒業研究では、ゴキブリの脚に人工のボディに取り付けました」
それではすぐに動かなくなるため、修論とドクター論文では、ゴキブリに小さな回路を背負わせて個体制御する「ロボローチ」の開発に成功した。その後さらに、昆虫を構成しているDNAやタンパク質、細胞などの生体材料を使ったモノづくりへと進んでいったのだとか。

もっとも、そんな竹内先生でも、最初に細胞を扱った時は、それまで扱い慣れた歯車やバネなどの機械材料との違いにとまどったという。
「細胞ときたら、べとべと、どろどろしていて形も様々だし、中には死んでしまうものもいる。こんなものをどうやって材料として扱えるようにしたらいいのかと思ったものです。でも、機械工学の研究者としては、なんとか自分たちの得意な領域に持ち込んで、制御性よく扱えるようにしたい。こうして細胞ブロックを工夫したのです。考えてみると、現在の研究も若い頃に『細胞でできたロボットをつくりたい』と思っていた延長線上にあるわけですね(笑)」

こう語る竹内先生は、最後に高校生たちにこんなメッセージを送ってくれた。
「高校生のとき、受験のために理系、文系と決めなければならないけれど、理系だから文系のことは分からなくてもいいとか、文学は読まなくていいとか、そうした区分けをしないほうがいい。もちろん、自分の進む道や夢を持つことは大切ですが、若いときはできるだけ広い視野で多くの分野のことを学ぶことが、将来きっと役立ちます。異分野の人とネットワークを組むうえでも大切な力になり、研究の幅も広がりますよ」

竹内先生

(2013年4月11日取材)

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