中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

空間分解能に優れたfMRI

ところで、夢を見ている時の脳活動パターンを解読するにあたって、fMRIを使ったのはなぜだろう。

脳活動を計測するにはいろいろな方法がある。
脳を開いて電極を埋め込み、直接脳の信号を解読する方法や、血液や脳に吸収されやすい物質に放射性物質の標識をつけ、それを検出することによって視覚化するPET(陽電子放射断層撮影法)、また、大脳皮質の神経細胞の電流を測定するMEG(脳磁計)、頭の表面に何本もの電極を当てて脳波を測定するEEG(脳波計)、近赤外分光法を用いて大脳皮質の神経活動に伴い変化するヘモグロビンの変化量を測定し画像化するNIRSなどが代表的なものだ。

こうした脳の情報を解読する方法には、それぞれの特徴があると、神谷室長は教えてくれた。
「脳の中に電極を埋め込む方法は、一個一個の電極の信号としてはとても精度が高く、リアルタイムでの制御性も良いのですが、なにしろ華道で使う剣山みたいなものを頭に刺すので侵襲度が高いのです。しかも、刺した部位に炎症が起き、計測効率が低下する問題があるほか、情報をとれる場所が限られています。脳波計は脳のどこからどんな信号が出ているのかを測定する場合、時間的には比較的レスポンスが速いのですが、一個の電極に周囲の信号が混ざってしまうなど、空間的な解像度がよくないんです。しかも信号を微弱にしか捉えられないのも弱点です。これに対してfMRIは血流の流れを捉えるため、時間的な反応はゆっくりしているのですが、空間分解能が1~3mmで、他の方法より脳の活動部位を正確に測定できます。
脳というのは、折りたたまれたシートのようなもので、表面を計測するだけでかなりの情報を得ることができます。一度に脳の幅広いところの情報を得ようとしたらfMRIは非常に優れているし、私たちの研究はリアルタイムで追究するというより、複雑で立体的なネットワークで情報をやりとりする脳の活動データをどれだけ精緻に取れるかが重要なので、fMRIが合っていると考えたわけです」

空間分解能 時間分解能 非侵襲 自由度 価格
fMRI × ×
電極埋め込み ×
PET × × ×
MEG(脳磁計) × ×
EEG(脳波計)
NIRS
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