中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

英語の言語データベースを使って夢をカテゴリー化

しかし、実際にfMRIを使って夢に出てくる画像を解読するまでには、試行錯誤を繰り返したという。

「夢の画像を読み出すのは原理的には可能だと思っていたのですが、いざ研究を進めるとなると大変でした。最初は、被験者の夢をコントロールして、脳の活動パターンを探ろうと考えたんです。そこで、被験者に眠る直前にコンピュータゲームのテトリスをやらせて、むりやりテトリスの夢を見させようと考えました。ところが、被験者は、『テトリスの夢など見なかった。見たのは電車の夢だったよ』というんです(笑)」

また、被験者のデータを取るのに、いつ眠ってもらうかも重要だった。
「睡眠には、からだは眠っているが、眼球が動いていて脳が活動をしているレム睡眠と、ぐっすり熟睡して眼球が動かないノンレム睡眠とがあります。夢はレム睡眠時に見るといわれているので、被験者がレム睡眠になったころを見計らってデータを取ろうと考えました。ところが、レム睡眠は入眠から1時間半くらい経たないと現れないので、データを取るにはあまりにも非効率的なのです。しかも、fMRI装置を使う場合、脳を1時間半スキャンするだけで10数万円もかかってしまう(笑)。

最近の夢研究では、入眠時にもレム睡眠中と同じように夢を見ると指摘されているので、私たちの研究でも、被験者が入眠して夢を見始めたらすぐに起こして、どんな夢を見たのかを尋ねるという作業を繰り返し行うことにしました。この方法ならばレム睡眠に入るのを待っているよりも、ずっと効率的で予算もそんなにかかりませんから(笑)」

この研究で最も難しく、かつキーポイントになったのが、「夢をカテゴリーに分類する」ことだったという。
「得られた夢の報告内容は、非常に多岐にわたっていました。こうした不定型なデータを、どうしたら構造化して提示することができるか、そこがこの研究の難しさであり、キーになるところでした。私たちは、日本語で報告された被験者の夢から、物や風景を表す名詞を抽出して、それを英単語に翻訳し、英語の言語データベースを使って同一のカテゴリーに属している単語群をまとめていきました。そして被験者ごとに、これらのカテゴリーに属した夢が出てきたかを解析していきました。

同一のカテゴリーに属している単語群をまとめていった

同一のカテゴリーに属している単語群をまとめていった

被験者の夢の報告に出てくる単語を分類して、上位概念のカテゴリーにくくっていったんだって。

同時に、こうしたカテゴリーに関連付けられる画像をWebの画像から抽出して収集し、先に話したように、これらの画像を見せた時の脳の活動を計測していったのです」
こうした作業によって、コントロールが困難な不定型な夢を定量的に扱えるようになったのだ。

被験者が入眠して夢を見た時に、夢の内容を日本語で報告させ、その中から物体の名詞を抽出、「Street」「Building」などのカテゴリーに分ける。Web画像を見せて脳活動計測し、どんな物体が夢に出てきたのかを解析する。

PAGE TOPへ