中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

初期のがん細胞でも診断可能

ここで疑問が浮かぶ。以前からいくつかの腫瘍マーカーが、健康診断などでがんの存在を知る手がかりとして使われてきたのでは? これまでのマーカーと、マイクロRNAとではどう違うんだろう?
「これまでのマーカーは、がん細胞の表面のタンパク質を目印にしたものでした。そのタンパク質は、がん細胞が大きくなりすぎて細胞の中心部にまで血液が回らなくなるなどして死んでしまい、バラバラになって血液中に漏れ出てきた結果、検出されるわけです。でもがん細胞が小さいうちはなかなか死なないため、腫瘍マーカーとして使うタンパク質は出てきません。もちろん、細胞分裂するときにエラーが起きて、初期のうちに血中にタンパク質が出ることもありますが、偶然にすぎません。このため、ごく初期のがんを発見できない可能性があるわけです」

これに対して、マイクロRNAを使った腫瘍マーカーは、たとえ小さな初期のがんでも見つけることができるのだという。
「がん細胞は、自分が生き延びるために特定のマイクロRNAを細胞の外に分泌します。そしてマイクロRNAは、血中を循環してほかの細胞に取り込まれ、そこで機能することによって自分自身を生存させようとするのです。つまり、従来の腫瘍マーカーのように、がん細胞が死ぬことによって検出されるのではなく、生きて活動を続けている状態でマイクロRNAが検出できるため、たとえ初期のがん細胞でも、これからどんな悪だくみをしようとするのかをチェックすることができるんですよ(笑)」

しかも、わずか0.3㏄の血液を採取し、それを3D-Gene(スリーディー・ジーン)と呼ばれる高感度の3Dチップで分析するだけで、どんなマイクロRNAが増えているのかを網羅的に分析できるのだという。
「現在までに 血液中のマイクロRNAをマーカーとして早期の乳がんなどを探し出すことに成功しています。ほんの1時間程度で検出できるので、近い将来健康診断などで活用しようと、このほど日本人に代表的な13種類のがんに関する大規模な研究がスタートしたわけです」

血液中のマイクロRNAを調べることによって、どんながんになっているかがわかるんだって!
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