中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

NEDOの一大プロジェクトが動き出した

2014年6月、国立がん研究センター、国立長寿医療研究センターなどの研究機関、大学、企業も加わった大規模なプロジェクトが動き出した。プロジェクト名は、「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」で、期間は2018年までの5年間。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が支援する総額約79億円もの大規模な研究開発だ。

落谷先生はこのプロジェクトの研究開発責任者を務めている。
「マイクロRNAを初期のがん診断に役立てるためには、まず信頼性のあるデータをとることが必要です。100例、200例といった研究室レベルのオーダーではなく、1種類のがんについて5000例もの多数の検体データをもとに研究を進めなければなりません。
ここで武器となるのが、国立がんセンターにはこれまで治療された患者さんの貴重な血液サンプルが大量にストックされていること。早期がんからかなり進行してしまったがんまで、どこで転移してどこで薬が効かなくなったかなど、すべてのステージが揃っていますから、がん診断だけでなく、薬の選択や治療方針の決定にも役立つデータベースとなるでしょう」
比較対照すべき健康な人のサンプルも必要なため、国立長寿医療研究センターなどと共同で研究を進める予定だ。
「がんだけでなく、まだ有効な診断のモノサシのないアルツハイマー病の研究への応用も期待されています」

また、総合病院だけでなく、街の小さなクリニック、健診センターなどで、誰でも簡単にがん健診を受けられる体制をつくっていくためには、小型で性能の良い診断装置の開発が求められる。このほど始まったプロジェクトの管轄が厚生労働省でなく経済産業省なのはこのためだ。
「マイクロRNAをマーカーとしたがん診断の研究は、ここ数年、世界各国の研究機関で行われていますが、私たちがこの技術を完成させ、日本だけでなく世界中に日本発の研究成果である診断装置を提供することができれば、医療産業の分野で国際的に優位に立つことができると思います。がんとマイクロRNAの関連は、人種を超えて共通なことがわかっているので、プロジェクトの成功は世界中の患者さんにも恩恵をもたらすはずで、大きな使命を感じています」

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