中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

ネフロン前駆細胞の大量培養

腎臓再生に向けた研究を加速させていくためには、ネフロン前駆細胞を大量に培養する技術も欠かせない。この研究成果が雑誌に掲載されたのが、最初の地震発生の翌日、2016年4月15日だった。

「この研究を担当したのは助教の谷川俊祐さんです。彼はアメリカでラット胎仔のネフロン前駆細胞の未分化状態を維持したまま17日間増殖できる条件を見つけていたのですが、ヒトiPS細胞で同じように未分化状態を維持し、大量に増殖することができれば、患者さんの血液からiPS細胞をつくってネフロン前駆細胞から糸球体や尿細管へと誘導し、病態を再現したり、創薬のスクリーニングに使うなど、腎不全の治療に向けて重要なツールを提供することができます。また、将来の細胞治療にも役立つはずです。今はまだ無制限に増えるわけではなく、8日間で4倍に増えるだけですが、改善に向けて研究に取り組んでいます」

さらに、ネフロン前駆細胞のまま凍結することができれば、iPS細胞からネフロン前駆細胞へと誘導する14日間を短縮することができるし、腎臓再生に取り組む世界中の研究者に提供することで、研究が加速していくと西中村先生は見ている。

「この研究でのポイントは、誘導する際に用いる因子の濃度を、通常より低濃度のものでも試したこと。細胞は同じ因子を使い回し、微妙な濃度で、未分化のままなのか、分化を促進するかの調整を行っていることになりますね」

◎今回の研究成果と今後期待されること

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