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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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DNAのダイナミックな動きの謎を解き明かしたい

遺伝情報の検索や転写の謎を探究していきたいと語る前島先生がDNAに興味を持ったのは、高校2年生のとき。利根川進博士が免疫細胞の抗体遺伝子の再構成の発見でノーベル医学生理学を受賞したことがきっかけだったという。
「抗体遺伝子のDNAがダイナミックにつなぎ替えられ、変化するということが、新鮮な驚きでした。そして分子生物学がとても面白そうだと感じましたね」

もっとも、高校では生物を勉強しておらず、大学は物理と化学で受験。ただ「物理や化学を使って生物の勉強をやったら面白いかもしれない」とは漠然と考えていたそうだ。
そんな先生が本格的に研究者を志したのが、筑波大学時代に理研や農水省の研究所でアルバイトをしたこと。
「当時、農業生物資源研究所の廣近洋彦先生の研究室で、細胞の動く遺伝子である『トランスポゾン』の研究のお手伝いをさせてもらい、その仕組みとかいろいろ興味深い話を聞いて、やっぱりDNAが面白い!と思ったのです」

こうして、大学院ではDNAの組み換えタンパク質を研究、さらにDNAのダイナミックな構造変化を探究しようと、細胞の核や染色体におけるDNAの動きをテーマに研究を続けてきた。
「言ってみれば高校2年のときのDNAがすごい!という驚きを今も追い続けているわけです」

前島先生は中高校生たちにこんなメッセージを寄せてくれた。
「生物は暗記モノで面白くないと思われがちで、数学とか物理が得意な高校生は敬遠しがちです。私の高校生の娘もそう言ってます(笑)。でも、生命の謎の中には物理や数学を使うとすごい発見ができそうなことがたくさんあります。これまでの私の研究でも、計算機の専門家とシミュレーションモデルを開発したり、X線散乱や超解像顕微鏡を利用し、物理や化学の第一線の研究者と共同研究を行って、多くの面白いことを見出してきました。
ぜひ、数学や物理が得意な人にも生命科学の研究に入ってきてほしい。そして、やってみたいこと、好きなことを見つけて、一生懸命取り組んでほしいですね」

物理や数学など、他分野の視点を取り込んで、これからますます生命科学が面白くなる、と力説する前島先生だ。

(2017年11月13日取材 2017年12月公開)