公益財団法人テルモ生命科学芸術財団

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

DNAの収納原理と遺伝情報の検索・読み出しの謎を追って~国立遺伝学研究所 構造遺伝学研究センター 前島研究室を訪ねて~

私たちヒトの身体の中には1000種・100兆個を超える細菌がすみついているという。成人男性なら重さにして約1.5kgにもなる。このうち最も多くの種類と数が集まっているのが腸だ。近年、腸内細菌と健康についての関心が高まっているが、興味深いことに、どんな種類の腸内細菌がいるかは、親子や一卵性双生児の間であってもかなりの違いがある。東京工業大学の山田拓司先生は、この腸内細菌集団のゲノムの全体像を調べることによって、大腸がんなど疾病の予防や創薬、薬の効果の検証などに活かしたいと研究を続けている。いったいどんな研究なのだろうか?
遊びながら腸内細菌について学べるボードゲーム「バクテロイゴ」

「わっ!やられた、下痢攻撃だー」「じゃ、こっちは抗生物質カードで反撃!」――2018年2月21日、東京工業大学大岡山キャンパスの学生ホールのあちこちで、子供たちの歓声が上がっている。小学生を対象にした「月1バクテロイゴ」大会が開催され、近隣の小学生とその保護者が「バクテロイゴ」と名付けられたボードゲームに熱中しているのだ。

写真提供;東工大ニュース

「バクテロイゴ」とは、大腸の中に多く存在する細菌の「バクテロイデス」と、「囲碁」を掛け合わせた造語で、私たちの身体の中にすむ腸内細菌について楽しく学んでもうおうと、山田拓司先生と山田研究室の学生たちが2015年に考案したボードゲームだ。
いったいどんなルールなんだろう? 山田先生が説明してくれた。

写真提供;東工大ニュース

バクテロイゴは、腸内細菌の陣取りゲーム。遊んでいるうちに腸内細菌の働きや役割がわかるんだって!

「言ってみれば、腸内細菌の陣取りゲームです。碁盤の目のような縦横12マスのボードの上で、2~4人のプレーヤーが、『バクテロイデス』とか『ブドウ球菌』などの細菌に分かれ、戦いを繰り広げます。手札によって、分裂して増えたり、抗生物質でやっつけられたりしますが、全滅はしません。6回順番が回ってきて、最後に一番多い菌が勝ちです」

腸内細菌ごとに使えるカードは異なる。例えば、腸の働きを助ける役割を持つ「ビフィドバクテリウム」なら3枚のカードを引いて攻撃数を増やせる「ヨーグルトカード」が使えるし、食中毒を起こす「ウェルシュ菌」は、指定のスペースをすべて攻撃できる「下痢カード」が使える。また、自分のコマを1つ犠牲にしてほかの菌を4つ倒すことができる「抗生物質カード」や、抗生物質の攻撃から守ることができる「ファージカード」、コマを自由に移動できる「蠕動運動カード」などもあり、さまざまな戦略が立てられるのだ。

「遊んでいるうちに腸内細菌の働きや役割がわかるという仕組みです。このバクテロイゴ大会は、月に1回のペースで開催しているほか、3月末のサイエンスカフェでも開催します。リピーターも多くて、このあたりの子供たちは、日本で一番、腸内細菌リテラシーが高いんじゃないかな(笑)」

ボードゲームだけではない。山田先生は最近、「腸内細菌の歌」をつくって広めている。これも、みんなで楽しく歌いながら腸内細菌の役割を理解してもらうのがねらいという。

腸内細菌をテーマに意欲的に啓発活動を展開している山田先生の専門は、遺伝子情報などの生命科学と、コンピュータを用いてビッグデータを解析する情報科学とを融合したバイオインフォマティクス。2013年からは私たちの健康を腸内環境から科学しようと、医療機関や企業などとも共同で、日本人の腸内環境の全容解明を目標に、腸内細菌のデータベースづくりや、大腸がんの早期発見や発がんリスク評価などの医療応用に取り組んでいる。

山田拓司(やまだ・たくじ)

東京工業大学 生命理工学院 准教授

京都府出身。2007年京都大学理学研究科博士課程修了。理学博士。07~08年同大学化学研究所特任助手。08~10年欧州分子生物学研究所(EMBL)ポスドク。10~12年EMBL Senior technical officer(上級技術責任者)。12~16年東京工業大学生命理工学研究科(生命情報専攻)講師。16年より現職。専門はメタゲノム解析。「日本人腸内環境の全容解明とその産業応用プラットフォーム(JCHM)」を立ち上げ、我が国初の腸内環境データベースづくりに取り組む。

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