公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

有性生殖で子どもを産み、老いてもまた若返る不思議

水に浮いて漂っているたくさんの動物プランクトン。遊泳能力がないか、あっても弱いため、水中で浮遊生活を送る生き物をプランクトンと呼ぶ。クラゲはどんなに小さくても、またどんなに大きいものでも、体のサイズに関係なくプランクトンの仲間だ。

クラゲはいつも水族館で見るような“クラゲ”の形をしているのではない。多くの種類は昆虫のようにいろいろな姿に変化しながら大人のクラゲへと成長していく。しかし普通は、岩などに付着する植物のようなポリプから海を漂う生体へと育ったのちには、子孫を残して死んで溶けてしまう。
「しかし、ベニクラゲだけは、人類が夢見てきた若返りをいとも簡単に、常温でたったの2日で、しかも繰り返し行うことができる不老不死の動物なのです」

クラゲは大きく2つの動物門にわかれる。1つはクシクラゲ類として知られる「有櫛(ゆうしつ)動物門」。もう1つはイソギンチャクやサンゴと同じ「刺胞動物門」。ほとんどのクラゲが刺胞動物門に属し、鉢クラゲ類、立方クラゲ類、ヒドロクラゲ類、十文字クラゲ類の4つに分けられる。ベニクラゲはヒドロクラゲ類の仲間だ。

「ベニクラゲも人間と同じくオスとメスがいて、有性生殖を行います。海中に放出された精子と卵子によって受精すると、プラヌラという楕円型の幼生になります。このプラヌラ幼生はいったん丸いかたまりになって海底の岩などに固着すると、植物のようなポリプの世代を迎えます。根を生やし、茎を出して、花のような部分を作れば一人前のポリプです。やがてポリプはエサを採りながら栄養を体全体に行き渡らせて成長していきます」
先ほど久保田先生はこのポリプにエサを与えていたのだ。

「根はさらに広がって伸びていって、あちこちに同じようなポリプが生まれ、蜘蛛の巣状の群体となっていきます。海水温が上がってくると群体となったポリプの茎に出っ張りができる。これがクラゲの芽で、芽はやがて茎を離れていって直径1㎜ぐらいのベニクラゲとして海中を漂うようになります。若いベニクラゲは動物プランクトンを食べながら成長し、数㎜~10mmほどの大きさになって成熟し、メスであれば卵を、オスであれば精子を作り始め、有性生殖を行うというわけです」

ベニクラゲの生活史

私たちが普通、クラゲといって思い浮かべるのはこの大人の世代。生殖する世代であり、生殖を終えれば死んでしまう。最初は肉ダンゴのような形になって、その後は95%は水分からできている体なので、やがて水に溶けて跡形もなく消滅してしまうのだ。

ところが、ベニクラゲは違う。
成熟して2カ月ほどが経過して寿命近くなったり、外敵に襲われるなどして傷ついたりすると、他のクラゲと同じように肉ダンゴ状の細胞のかたまりになる。そこまでは同じだが、ほかのクラゲとちがって、海中に溶けることなくキチン質の膜で肉ダンゴを覆い、海底の岩などにくっつく。そこから再び植物の根のようなものが伸びてきて、茎を出して花のような部分を作ってポリプとして成長、やがては大人のクラゲになるのだ! 老いては若返る、不老不死のライフサイクルを繰り返すという。

ストレスで退化中のベニクラゲ

肉ダンゴ状のベニクラゲ

若返ったばかりのポリプ

若返ったあとに、根を張りめぐらし、群体を形成

花のようになったポリプ。赤い部分がクラゲの芽で、やがて若いクラゲとなって泳ぎだす

若いベニクラゲ

ベニクラゲの成体

ベニクラゲはこんなふうに若返って、また大人になるのか!