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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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生物の分類と進化について、簡単におさらいすると

いきなり原核生物とか真核生物といった言葉が登場したので、ここで生物の分類についてざっとおさらいをしておこう。
地球上の生物は大きく分けると細菌(バクテリア)、古細菌(アーキア)、真核生物の3グループがある。これらの最も大きな違いは、細胞内に核を持っているか持っていないかで、細胞内に核を持ち、“生命の設計図”であるDNAが核の中にしっかりと収容されている真核生物に対して、核を持たずDNAが細胞内でむき出しの状態になっているのが細菌と古細菌で、2つまとめて原核生物と呼ばれる。

具体的な例をあげれば、大腸菌とか乳酸菌などの細菌類とシアノバクテリア(ラン藻類)はバクテリア。また、アーキアには海底火山の熱水鉱床付近に生息する好熱菌、高濃度の塩湖などにすむ好塩菌、腐った沼地や動物の腸などにすむメタン菌などがある。
一方、ヒトを含む動物や植物、それにカビやキノコ類などの菌類は真核生物で、真核生物のうち、動物や植物、菌類のいずれにも属さない生物のことを総称して原生生物と呼んでいる。すべての真核藻類(褐藻類、紅藻類など)、鞭毛を持つ菌類的生物(ミズカビ類など)、変形菌類(粘菌など)、原生動物(アメーバ、ゾウリムシなど)がこれに含まれている。

38億年前、最初に誕生した生物は原核生物だった。地球にはまだ酸素はなく、原始の海中の有機物を利用する嫌気性栄養生物が初期の生物とされる。その後、熱水噴出孔などにすむ硫黄細菌など、化学エネルギーを利用して有機物をつくる化学合成細菌や、太陽の光エネルギーを利用する紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌などの独立栄養生物が誕生。このときはまだ硫化水素から二酸化炭素を還元していたので、酸素はできない。
豊富に存在する水を使って光合成を行うシアノバクテリアが登場したのが30億年前だ。22億年前になると、シアノバクテリアが産生する酸素を上手に利用する好気性細菌が誕生・繁栄し、最初は海中に、次いで大気中に酸素が増え、こうして20億年前に真核生物が誕生した。

真核生物は原核生物に比べて大きな細胞を持ち、発達した細胞骨格を備えている。それによって大きな粒子や他の生物を自分の細胞に取り込むことが可能になった。核の中で自分のDNAを守りながら、好気性細菌を取り込んでエネルギー産生を担うミトコンドリアを備えたものから動物細胞が生まれ、さらにシアノバクテリアを取り込んで葉緑体を持ったものから植物が進化したといわれている。

原核生物から真核生物への進化

これらの取り込みが食作用によって起こったという説もあり、真核生物がどのように食作用を獲得したのかが、真核生物への進化を探るうえで重要な意味を持っているというわけなのだ。