公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

挑戦的な仮説を立てて、戦略を考えよう

ヒドラも睡眠をとるという論文の反響は大きかったという。
「研究者だけでなく、一般の方からも反響がありました。中には、パキコダイリという群体ヒドラを飼育している方から、『餌を与えても反応しないことがあって不思議に思っていたけれど、眠っていたのかもしれない』というフィードバックがあって、興味深かったですね。小学校時代から愛読していた科学雑誌の『Newton』に記事を掲載していただいたこともうれしかったし、世界的な経済誌の『Forbes』にも載ったんですよ」

卒業後は大学院に進み、現在は東京大学大学院医学系研究科の上田泰己教授*の研究室に所属している金谷さん。現在はマウスを使って、睡眠のメカニズムの解明とともに人工の眠りである麻酔のメカニズムについて研究しているという。
「自然の眠りとしては睡眠がありますが、人工的な眠りとしての麻酔は、医療で頻繁に使われているものの、実はそのメカニズムはあまりわかっていないんです。どこが睡眠と似ていて、どこが違うのか? 私たちに使われる麻酔は、線虫やショウジョウバエにも作用するのですが、麻酔のメカニズムも進化的に保存されているはずで、このように身近なものなのにわかっていないことを解明していく研究は、実にわくわくしますね」

*上田泰己先生のインタビューはこちら

システムズ薬理学研究室で研究中

小学3年生から中学3年生までは、ずっとアゲハ蝶の通る道の研究をしていたという金谷さん。
「幼虫から育てて、鉢植えのミカンの木を買ってきて、木の位置を変えたらどのように蝶が飛ぶルートが変わるのかといったことを、ずーっと調べていました。数学や物理では新しい発見は大変ですが、生命科学や生物では、小学生がやるような実験でも誰も知っていないことを比較的簡単に発見できるので熱中して、当時からいろいろな新しいことを見つけた記憶があります」

学部時代に筆頭著者として3本の論文を発表したが、仮説を立てて実験を組み立てていく経験は、高校時代の部活で鍛えられたという。
「化学・生物部の指導教諭の児玉伊智郎先生が、博士号を持っていて、教員でありながらも一研究者としてご自身の研究を精力的に続けておられる方で、仮説を立てて論文にまとめるまでに、どういうアイデアや思考が必要なのかということを徹底的に教わりました」

研究の醍醐味は、一見突飛に思えることや、簡単に解くのが難しそうな挑戦的な仮説を立てて、どういう戦略で証明できるかを試行錯誤しながら考えていくところにある、と金谷さんは力説する。

「あれこれ考える中で、疑問に思ったりひっかかったりするものがあります。それを大事に心にとどめておくと、それがヒントになって将来きっと役に立つはずです。研究にあたっては何度も難しい課題に直面するものですが、自らのアイデアに自信を持って頑張りぬく精神力も大切ですね」

(2021年3月4日更新)