財団賞

財団賞は財団設立25周年を機に、褒章事業の一つとして設けられました。
当財団がこれまでに研究助成を実施した研究の中から、実績、独創性、将来性、すべての点で際立って優れた成果を上げた研究者を表彰するものです。

本賞は第9回をもって終了し、2021年度からは、対象領域を医工連携・融合領域とし、応募対象を拡大させた森下泰記念賞へと移行しました。

第9回(2020年度)受賞者

氏名 藤田 靖幸(ふじたやすゆき)
所属 北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室 客員研究員
研究テーマ 先天性皮膚疾患に対する根本的治療の開発
受賞理由 遺伝子異常が後天的に消失して正常化する「復帰変異モザイク」という現象に着目した独創的な研究である。復帰変異モザイク部位から得た培養表皮シートによる治療法を確立して保険収載にまで至ると共に、Muse細胞を用いた治療法についても企業主導治験を行うなど、今後の成果が期待される。

第8回(2019年度)受賞者

氏名 菅波 孝祥(すがなみ たかよし)
所属 名古屋大学 環境医学研究所 教授
研究テーマ グルコース応答性スマートゲルを用いた人工膵臓デバイスの開発
受賞理由 グルコース応答性ゲルを用いてエレクトロニクスフリーの人工膵臓デバイスを開発するという着想は独創的であり、障壁となる課題を解決しながら着実に成果を積み上げている。既存の間欠的インスリン投与やマイクロコンピューター制御のインスリンポンプの弱点を克服する可能性を示し、今後の臨床応用が期待される。

第7回(2018年度)受賞者

氏名 榎本 和生(えもと かずお)
所属 東京大学 大学院理学系研究科 教授
研究テーマ 脳神経回路の変性・再生メカニズムの解明と予防・治療戦略への応用
受賞理由 神経突起変性の分子細胞メカニズムの発見から研究を進展させ、脳神経回路の変性や再生・修復を担う分子細胞メカニズムの解明に向けて、世界をリードする画期的な研究成果を数多くあげている。また、今後、中枢神経回路の損傷や変性に起因する疾患の予防・治療に向けた応用研究の展開が期待される。

第6回(2017年度)受賞者

氏名 谷内 一彦(やない かずひこ)
所属 東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター センター長
研究テーマ 神経変性疾患における蛋白特異的PET分子イメージング法の開発と応用
受賞理由 タンパク特異的 PETイメージングプローブの開発と、それを応用した臨床研究に継続的に取り組み、着実に成果を上げている。
また、開発した最新のプローブは臨床的有用性が高く評価され、日本のみならず世界各国で臨床研究に使用されており、アルツハイマー病を代表とする神経変性疾患の早期診断実用化が期待される。

第5回(2016年度)受賞者

氏名 江藤 浩之(えとう こうじ)
所属 京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 教授
研究テーマ iPS細胞技術を応用した血小板製剤の開発
受賞理由 ヒトES細胞からの造血前駆細胞濃縮分子機構を解明し、効率的血小板産生法で顕著な研究成果をあげている。また、こうした成果を基礎に、ヒトiPS細胞から血小板の大量供給を可能とする巨核球細胞の開発を進めており、血小板製剤の供給不足が深刻化している中で、生体外血小板製造の実現に向けて研究のさらなる展開と実用化が期待される。
氏名 内匠 透(たくみ とおる)
所属 理化学研究所 脳科学総合研究センター シニアチームリーダー
研究テーマ 自閉症モデルマウスを用いたセロトニンの機能解明
受賞理由 自閉症ヒト型モデルマウスを作成して機能解析を行い、セロトニン系の果たす役割を解明しようとする独創的かつ先端的な研究を進めている。また、今後、脳領域における重要な疾患である自閉症に対し、薬物療法の道を切り拓いていくことが期待される。

第4回(2015年度)受賞者

氏名 川口 寧(かわぐち やすし)
所属 東京大学医科学研究所 副所長
感染・免疫部門ウイルス病態制御分野 教授
研究テーマ 新しい抗ウイルス戦略構築をめざしたヘルペスウイルス感染機構の解析
受賞理由 単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染症メカニズムに関して、一貫した研究を遂行し、新たな細胞内侵入機構や病態発現機構の解明、HSVヌクレオカプシドの核外輸送機構の解明など、トップレベルの業績をあげている。
また、これらの知見をもとに、HSV感染症に対するワクチンや抗ウイルス薬の開発がすすめられており、医療に対する貢献が強く期待される。

第3回(2014年度)受賞者

氏名 荒木 敏之(あらき としゆき)
所属 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第5部 部長
研究テーマ 神経軸索変性メカニズムの研究と神経保護的疾患治療法の開発
受賞理由 長年に渡って神経軸索変性の研究を遂行し、そのメカニズムについてNAD代謝の視点からユニークな研究成果をあげている。 また、シグナル伝達系の阻害による神経軸索保護メカニズムを明らかにしたこと、その成果をもとに神経変性疾患であるALSの病態解明に取り組むなど極めて精力的な研究を推進している。

第2回(2013年度)受賞者

氏名 村上 誠(むらかみ まこと)
所属 東京都医学総合研究所脂質代謝プロジェクト 参事研究員
研究テーマ 新規創薬標的としてのsPLA2分子群の新しい機能の解析
受賞理由 長年に亘りPLA2の研究を継続して遂行し、多くの業績を挙げている。特に細胞外に分泌されるsPLA2ファミリーの全アイソザイムの網羅的解析から、「sPLA2群の真の機能が細胞外に存在するリン脂質を分解することにある」ことを解明した先駆的・独創的な成果を高く評価できた。

第1回(2012年度)受賞者

氏名 中島 欽一(なかじま きんいち)
所属 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 教授
研究テーマ エピジェネティック因子による神経幹細胞分化制御と新規脊髄損傷治療法開発
受賞理由 エピジェネティックな因子によって神経幹細胞分化が制御されているという基礎的な研究の成果を、脊椎損傷の新治療の開発をめざして応用展開している。極めて独創性が高く、今後の展開が大いに期待された。