公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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大学3年生のときにカナダに留学

———東大は1・2年次には駒場の教養学部前期課程で学びます。駒場時代の思い出を教えてください。

松田良一(まつだ・りょういち)先生の「生命科学の現在」という全学自由研究ゼミナールに参加したことですね。これは松田先生ご自身のつてで最先端の研究者を訪ねるラボツアーで、水曜日の夕方、正門に集合してアポイントのあるラボにうかがいます。時には研究室のみなさんと夕飯をご一緒することもあったし、遅くまで研究の魅力を語ってくださる先生もいらして、研究の世界のおもしろさを知りました。ゴールデンウィークには岡崎の基礎生物学研究所や京大を1泊2日で訪れるツアーまであって、本当に贅沢な時間でした。あまりにおもしろくて、1年、2年と続けて同じゼミを取りました。

———ラボツアー以外のプログラムもあったのですか?

松田先生ご自身は筋肉の発生がご専門で、冬の集中講義では年末4日間くらいかけてニワトリの胚を培養し、組織に分化させる演習もやりました。実際に網膜細胞ができたり、心筋細胞が拍動するのを見たりしてとても感動したことを覚えています。研究っておもしろい!と感じて、将来研究者をめざそうと思ったのは、このゼミが大きかったと思います。

———訪れた中で、とくに印象に残ったラボはありますか。

当時、東大の医科学研究所にいらした御子柴克彦(みこしば・かつひこ)先生のお話はやはりすごくおもしろかった。カルシウムというと骨を強くするといったイメージが強いと思いますが、私たちのからだの中でいろいろな働きをしており、ありとあらゆる神経活動を制御しているというお話に、大学院になったら先生の研究室に行きたいと強く思いましたね。

———薬学部に進んだのはなぜですか?

大学1年のときの授業で、テーラーメイド医療に興味を持ちました。遺伝子の配列を見てその人に合った薬剤や治療法を選択することができるなんて画期的だと感動し、医学部に進むことはできないけれど、薬の分野からそれぞれの人に適した薬剤を処方するという形でなら医療に関われると考えたのです。

———薬学部時代に、カナダに留学なさっていますね?

薬学部に進んだものの、将来ははっきりしないまま、海外への憧れも残っていました。そんなとき掲示板で「高円宮記念クイーンズ大学奨学金」を見つけたんです。語学留学ではなく、学部を問わず自分の学んでいる学問をそのままクイーンズ大学でも学べるというものでした。渡航費と学費、食費や生活費も出るうえ、カナダを知るために休暇中の旅費なども一部補助してくれる潤沢な支援もあります。東大はクイーンズ大学と協定を結んではいなかったため単位互換はできないのですが、学部生のうちにぜひ留学したいと応募し、採択されました。

———留学中はどんなことを学びましたか。

クイーンズ大学では薬学科がなかったため生物学科を選び、生物や化学など自分が興味のある授業を取りました。東大の薬学部の先生に紹介していただいて、化学系のラボにも顔を出していました。初めてショウジョウバエを扱ったのもそのときです。論文についてディスカッションする機会も多く、自分の意見をしっかり持つことの大切さを学びました。

新入生および新メンバーの歓迎行事

カナダで人気があったアイスホッケーに挑戦(左から3番目)。

International Residence(国際学生寮)のキッチンにて

———休暇はどんなふうに過ごしていましたか。

グレイハウンドバス*で観光名所はもちろん、カナダのあらゆるところを回りました。なかでも、カナダの友人の実家があるアルバータ州北東部のフォートマクマレー地区で、大規模なオイルサンド**油田を400tトラックで走る体験をしました。地平線が見える広大な場所に重機がいくつも立ち並ぶ光景は、忘れられない思い出です。

*グレイハウンドバス:カナダにも路線を持つ、米国で最大規模のグレイハウンド社が運行するバス。
**オイルサンド:極めて粘性の高い鉱物油分を含む砂岩。

寮のツアーでニューヨークに行き、憧れの国連を訪問。

フォートマクマレーで友人とともに