公益財団法人テルモ生命科学振興財団

財団サイトへもどる

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

サイト内検索

学習意欲にも関係するドーパミン

そもそも神経伝達物質は、どのような働きをするんですか。

私たちの気分や感情、性格、さらには記憶力などにも関係していると考えられています。例えばドーパミンは、「意欲」「運動」「快楽」に関係する神経伝達物質で、「気持ちが良い」「心地良い」と感じると出るといわれています。最近の研究で、ドーパミンは「この先何かいいことがあると感じたときに出るらしい」ということが分かってきました。
ボタンを押すとサルの欲しいものが出てくる実験をしたところ、ボタンを押すと欲しいものが出るとサルが気づいた時点で、サルの脳からドーパミンが出ることが分かったのです。

そうか、これからバナナが食べられると思ったときに、どっとドーパミンが出るわけなんですね。

食いしん坊のケンタ君ならきっとたくさん出るだろうニャー。

私たちが何かをしようという「意欲」を持ったときにドーパミンが出て、それが「楽しい」という「快楽感」につながることはほぼ確実と考えられていて、これに異議を唱える脳科学者はほとんどいません。
ですから、「ようし、これから勉強するぞ」と意欲を持ち、気持ち良く勉強することでドーパミンの働きが活発になり、勉強や仕事の効率が上がるということは十分考えられることなのです。

先生、ではドーパミンは、たくさん出れば出るほど、勉強がはかどったり、幸福感を覚えたりするなど、いいことばかりなんですか。

いや、ドーパミンは不足していても困るけれど、過剰になっても問題がある神経伝達物質なのです。ドーパミンには、中脳の腹側被蓋野から出るものと、黒質から出るものがあって、それぞれ働き方に違いがあります。
腹側被蓋野から出るドーパミンは、空腹が満たされたり、何かを達成したときなどに出て快感を誘う報酬系のドーパミンですが、お酒がやめられないとか、ギャンブルに夢中になってしまうなどの、いわゆる依存症に関係すると考えられています。
覚醒剤のアンフェタミンはこの腹側被蓋野からのドーパミンを過剰に分泌させる働きを持っていて、幻覚症状が出たり、被害妄想を抱くようになってきわめて危険なんですよ。