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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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ドーパミンとパーキンソン病の関係

もう一つ、中脳の大脳基底核にある黒質から出るドーパミンは、どんな働きを持っているんですか?

「意欲」や「運動」に関係すると考えられています。このことは、パーキンソン病の研究によって明らかになりました。パーキンソン病は、多くの場合60歳以上の高齢者に発症する病気で、何かしたいという意欲がなくなり、喜怒哀楽に乏しくなるという特徴があります。そのほか歩き方がぎくしゃくする歩行障害や、手が震えるなどの障害が現れる病気です。
この病気の原因を研究したところ、パーキンソン病の人は、黒質にあるドーパミン神経細胞がどんどん死んでいくことが分かりました。このため、運動指令のコントロールや意思決定にかかわる線条体に送り届けられるドーパミンが減ってしまい、線条体がうまく機能しなくなるのです。

パーキンソン病については、
シリーズ1 第27回
「iPS細胞によるパーキンソン病治療最前線」

を見てね!

ということは、パーキンソン病は、ドーパミンが不足することによって起きてしまう病気だということですね。

それなら、患者さんにドーパミンを投与すれば効果がありそうなものだけどなぁ。

いや、ドーパミンは脳の外から薬として投与しても効き目がないのです。

それはなぜなんですか。

脳は私たちの身体の中でも非常に重要な部位で、脳の中に外から何か影響を及ぼすものが入ってくると大変ですね。そこで「血液脳関門」という、いわば関所のようなものがあって、入ってくる物質を制限しているんです。ドーパミンもこの関所を通り抜けられない物質なんですよ。

では、どうすればいいのですか。

実は血液脳関門は、ドーパミンは通さなくても、脳の中でドーパミンになるL-ドーパという前駆体は通してくれるんです。そこで、パーキンソン病の患者さんにL-ドーパを投与して様子を見たところ、2~3時間ばかりするとだんだん症状が良くなり、やはりドーパミンがパーキンソン病に効果があることが確かめられました。

なるほど!

さて、ここで、保留しておいたリカ子さんの質問「GABA入りチョコレートを食べると、本当にストレスが軽減されるのか」という質問にお答えしましょう。答えは「効果がありません」です。

えー! 効果がないんですか!

たしかにGABAは脳の中で興奮した神経を鎮める働きをする神経伝達物質ですが、胃や腸から吸収されたGABAを脳に取り入れようとしても、ドーパミンと同じように血液脳関門を通ることができないんですよ。

あちゃあ。

もっとも、GABAを含んだ乳製品が高血圧に効果があったという報告もあり、GABA入り食品がすべて効果がないというわけではないでしょう。それに、効かない薬でも効くと思って飲めば効果が出ることを「プラシーボ効果」といいます。GABA入りチョコレートを食べればストレスが軽減されると信じて食べれば、効果があるかもしれませんよ。日本の諺ではこうしたことを「イワシの頭も信心から」と言うのですね(笑)。