公益財団法人テルモ生命科学振興財団

財団サイトへもどる

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第3回
マウスを透明化して、
生命現象のシステムを解き明かす

第2章 音楽とマウスの動き、カエルの採餌行動を探る
〜高校生の研究紹介その2〜

奥山
奥山映美です。私の研究はまだ計画段階なんですけど、音楽の種類がマウスの行動に変化を与えるのかという実験をしようと思っています。実験の仕方としては、ケージにマウスを入れて、無音と、ノイズと、あと音楽をかけたときのマウスの動きを解析します。音楽は、クラシック、J-POP、ジャズを予定していて、音楽の種類によって、そのマウスの行動量の変化を見たいと思います。
音楽の種類でマウスの行動が変わるのかを研究したいです

奥山映美(おくやま えいみー)さん(4年)

洲﨑
面白そうですね。音楽はどういう選曲をするんですか。
奥山
今すごい悩んでるんですが。アップテンポな曲と、スローな感じの曲とっていう風に音楽に差をつけたいので、J-POPのほうはB'zの『ultra soul』などを考えてます。
洲﨑
なるほど。結構奥山さんの好みが入る感じですけど、曲によってマウスの行動量が違うと面白いですね。動物飼育施設でモーツァルトを動物に聴かせているところがあると聞いたことあります。なぜ音楽に注目したんですか。
奥山
私自身クラシックバレエを習っていて、速い音楽を聴いて踊るときは、筋肉を動かしやすく、振り付けも速いので行動量が多い感じがします。逆にスローな音楽や、ねっとりしてる感じの音楽だと、自分の筋肉も音楽に合わせて、振りも行動量が多くないと感じます。それで聴く音楽と行動量は関係しているのかをマウスで見てみようと思いました。
洲﨑
行動量だけだとちょっと難しいかもしれないので、筋電図をつけて筋肉の動きなんかを一緒に測れるといいかもしれないですね。マウスでなくラットぐらいサイズが大きいといろいろ測れるし、彼らは結構頭がいいので、バレエとまではいかないかもしれませんが、簡単な振り付けを覚えさせて躍らせることはできるかもしれない。踊るラット、楽しそうでいいですね。ありがとうございます。
岸野
岸野紘大です。よろしくお願いします。僕はカエルの実験をしています。カエルってもともと動く餌しか食べないっていう性質を持っているのですが、動く餌といっても色とか形、速さが異なるときのカエルの反応は違うんじゃないか。それを調べるために、パソコンのモニター上で図形をカエルの目の前で動かしてみて、どういう種類の餌が好きなのかを見る実験をしています。
カエルの採餌行動の研究をしています

岸野紘大(きしの こうだい)君(5年)

洲﨑
カエルはどういう餌が好みでしたか。
岸野
まず色を赤、青、緑、黒に変えてみたんですけど、黒や青の濃い色に好みを示してすごく採餌行動を取りやすかったんです。逆に赤や緑など、自然界で餌として色にないものは採餌行動を取りにくかったという結果が出ました。

カエルの採餌行動の変化について、モニターにさまざまな大きさ、色、動き、速さの図形を映し出したときの反応を観察して研究している。

洲﨑
餌を動かす際の背景色は白ですか?
岸野
背景は全部白ですね。あと二つ目の実験では、白の背景に黒の物体を動かしたときと、その逆の黒の背景に白の物体を動かしたときのカエルの反応を比較しました。ヒキガエルの先行研究では、黒の背景に白の物体のほうが好みを示しやすかったという結果なのですが、今回僕が実験したアマガエルでは、全く逆、白の背景に黒の物体が動いたときだけ採餌行動を取りやすいという結果が出ました。
洲﨑
それは昼行性と夜行性など何か関係があるんですか。アマガエルは昼行性なのかな。
岸野
はい、そうです。ヒキガエルは完全な夜行性ですので、アマガエルとヒキガエルで実験結果が異なるのは、目に違いがあるのかなと。
洲﨑
面白いですね。どこで違っているですかね、目なのか、脳なのか。
岸野
目だったら錐体細胞*の数に違いがあるのかも。アマガエルは人間よりも多くの色が見えていて、錐体細胞がたくさんあるそうです。逆にヒキガエルにはそういう細胞がないと聞いたので、そういう差が結果に出たのかもしれません。
洲﨑
そうすると、ヒキガエルは夜行性だから多分暗いところを見るときに働く桿体細胞*のほうが多いのかな。
(注)錐体(すいたい)細胞と捍体(かんたい)細胞
錐体細胞は、物体から反射した異なる光の波長に反応して色を認識する視細胞。ヒトの目では赤、緑、青の錐体を網膜の中心部に多く持ち、主に明るい場所で働く。捍体細胞は色の識別には関わらないが光を受け取る感度が高いため暗い場所で物を見るときに働く。
岸野
そうですね。モニター上の図形の大きさを変えて反応を見る実験もやったんですけど、10 cm以上の大きさの場合、アマガエルは全く反応しませんでした。
洲﨑
ある大きさ以上だともう餌だと認識しないと。面白いですね。魚も同様に、一定サイズの動くものを全部餌だと認識して、取りあえず何でも食べるような習性がありますよね。岸野くんは今の研究をどこまで突き詰めようと思ってるんですか。
岸野
例えば今やってるアマガエルの実験なんですけど、プラケースの中で透明な仕切りで区切られた反対側に餌となるコオロギを入れて、1カ月間ほど餌が目の前に動いてるんだけど食べられない状況を作ります。そのときに、アマガエルがコオロギのことを餌じゃないと学習するのかどうかを調べたいと考えています。
洲﨑
そのテーマも結構面白いですね。カエルって学習するんですかね。魚でも学習するからカエルもするかな。皆さんの研究、面白いです。

この記事をみんなにシェアしよう!