公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第5回
生物の機能を活用した、
新しい原理で動く機械の開発

第2章 微細な流路を使って、細胞一つ一つの性質を調べる

田中
私の研究は、大きく2つあります。1つ目は、得意技術を使って他の研究者と連携して進めているもので、マイクロ流路というものを作っています。バイオ分野の研究では、同じように見える細胞一つ一つも、機能している遺伝子が異なるため、それぞれ個性があることが近年分かってきました。そのため、細胞の性質をより深く理解するために、一つ一つを分けて観察する必要が出てきたんです。それを可能にするために、髪の毛や蚊の針の太さ(10~100 μm)と同じか、それ以下のきわめて細い流路を作って、細胞を一つずつ流してやるんです。実際見てもらうと、この小型のチップ上に細い線みたいなものが入っているのが分かると思います。

マイクロ流路を見つめる高校生たち。「マイクロ流路を使えば細胞が一つずつ流せます」と田中先生

マイクロ流路。基板上に左右に往復する長い流路が作られている

一同
ほんとだ、すごく細いですね!
田中
ここに細胞が入った培養液を流していきます。一部に培養液がたまるようにして、そこに留まった細胞を観察できるようにしています。たまり場には、細胞1個~数個しか入らないので、細胞一つ一つの性質を調べることができるんです。そのため、今在籍している理化学研究所では、細胞を扱う生化学の研究者と連携しながら、彼らの研究に役立つマイクロチップデバイスの開発も行っています。

流路の顕微写真。上の流路の赤く囲んだ部分を拡大。流路は髪の毛ほどの細さだ。100μm(マイクロメートル) = 0.1mm

吉岡
マイクロチップデバイスを用いて、具体的にはどんな研究をされたんですか?
田中
例えば、大腸菌1個が入る規則的なくぼみがたくさん設置された「大腸菌のカプセルホテル」を作製しました。つまり、大腸菌を1個ずつ閉じ込められるんです。そのため、大腸菌の増殖を1細胞ずつ個別に測定することが可能になりました。

1つのくぼみの大きさは長さ4×幅0.6×深さ0.5マイクロメートル。このくぼみが1平方ミリメートルあたり65,000個の密度で整然と並んでおり、生きたまま一つ一つの大腸菌を顕微鏡で観察することができる。
参考:理研プレスリリース

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