公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第5回
生物の機能を活用した、
新しい原理で動く機械の開発

第4章 誰もやらないことをやるのが研究

都藤
田中先生の研究テーマは、普通考えもしないような突飛なものが多いと思います。そうした研究が多いのはどうしてですか。
田中
そもそも自分がそういう人間だからとしかちょっと言いようがないですね。
一同

「先生の研究アイデアはとても独特なものが多いですね」

田中
努力してこうなったわけじゃなくて、本能的に自分しか行けない道を行きたいなっていう思いがあるんですよ。それこそ高校生の時もそう思っていました。研究者を目指したのも、こういう性格だからなのかな。他の人がやっているようなことをやるんだったら、自分で研究する必要がないっていうふうに僕は思っているので、結果的に変わったことや新しいことになるんですよね。
太畑
新しいことを研究し続けることはとても大変なことだと思います。田中先生自身は、シビレエイの研究を進める中でどんなことが一番大変でしたか?
田中
実は実験に使うシビレエイを入手するのが一番大変です。他の人に言ってもあまり理解してもらえないんですが、手に入ってしまえば、どんな実験をするかはあらかじめ決めているので、そこまで苦労はしないんですね。でも、売られている魚でもないので、そもそもどこで捕獲されるのか、どう輸送すればいいのか、情報がないんです。知り合いのつてでペットショップに聞いたり、漁師さんに聞いたり…。そういうところから、三重県で捕れた魚を全国に配送している会社があると聞いて、そこに頼んで捕獲されたら連絡をもらえるようにして、ようやく入手できるようになりました。
都藤
私たちも研究で使うヒトデを最初は自分たちで川から捕っていましたが、今は漁師さんに譲ってもらったりしています。
田中
そういう動きは大事ですね。みんな頭では考えるし、口では言うけれど、実際それをやるかっていうと、躊躇する人は多いんですよ。例えば、発電する生き物を使って何か動かすって、デンキウナギなどは有名なので、これに発電させて使えないかって考えた人はけっこういるんじゃないかと思います。でも、実際に入手しやすい発電魚を見定めて、どうやって手に入れるかを考えて調達して、実験してみてっていうところまでいったのが僕だけだったんですね。
僕が感じるのは、そのハードルを乗り越えることができれば、確実にみんながやってないことができるということですね。だから、突飛なことを考えるというよりは、やりきる行動力っていうか、そっちのほうがむしろ重要かもしれないなと思います。

「アイデアを思いついたら、実際に取り組む行動力が研究者にとって大切です」

都藤
他に取り組んでいる人がいない研究だから、何をしていくべきかは自分で考えていかなくちゃいけない。だからこそ、やりきる力が重要なんですね!
田中
まさにそうです。ゴールが分かっていたら、道筋を考えるのは簡単なんですよ。だから、こんな実験をしてみたらどうだろうと考えたら、計画を立ててやってみればいいだけなんです。もちろん進める中で苦労はあるだろうけど、それよりも「この生き物を使ってどんな研究ができるだろう?」って考える方が大変。だからこそ、思いついたことには手をつけてみて、やりきってみて、どんなことが考えられるだろう?と進めていくのが大切だと思います。
吉岡
田中先生だったらヒトデを使ってどんな研究をしてみたいと思いますか?
田中
ヒトデ、たしかに面白い材料だと思います。生物のシステムを活用して機械を作るという観点でヒトデを見ると、再生能力や海底にへばりつく能力を活用できないかと思いますね。先ほど話したように私は海底調査のための技術も作っているんですが、例えば海底で機械が壊れたら、陸上に戻して修理する必要がありますよね。それを、ヒトデの再生能力を使って自己修復するシステムが作れると面白いですよね。

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