中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第9回
ウイルスの一生を視る

第2章 レクチャー2 エボラウイルス感染拡大の背景

南保
次に、エボラウイルスがなぜ感染拡大するのか説明しましょう。エボラウイルスと聞いて、まず皆さんの頭に浮かぶのは、やはり数年前(2013~15年)に西アフリカで起きたアウトブレイクではないかと思います(図4)。従来のアウトブレイクはアフリカ中央部の狭いエリアで単発的に起こるケースがほとんどで、すぐに終息するものでしたが、この時はまったく違う様相を示すものとなってしまいました。
※アウトブレイク(outbreak)は、特定の地域や集団内に爆発的な感染を起こすことを指す。ちなみに、数カ国規模へ拡大・流行することを「エピデミック(epidemic)」、さらに多くの国や大陸にまたがって流行することを「パンデミック(pandemic)」と呼ぶ。

図4(図版提供:南保明日香教授)

 
例えば感染者数や死者数は、それまでは最大でも数百人ぐらいだったのが、感染者数が2万人、死者数も1万人を超える状況となり、終息までに2年もかかってしまいました。さらに、感染が複数国にまたがって起き、いろいろな国から支援にきた医療従事者が感染して母国に戻って2次感染が起きたりと、大きな問題になりました。終息した後も、交通網の発達で人の動きが年々、活発化していることもあり、その後も同じようなアウトブレイクが起きる恐れがあったわけです。
その憂慮が残念ながら現実のものになってしまい、18年5月からコンゴ民主共和国でエボラアウトブレイクが起きています(図5)。19年7月には、コンゴのかなり大きな都市で感染者が出て、WHOが緊急事態宣言を出す事態になってしまいました。8月19日のレポートによると感染者数3,000人、死者数2,000人と、非常に憂慮される状態です。

図5(図版提供:南保明日香教授)

 
エボラアウトブレイクの制圧の難しさには、いくつか理由があります。エボラウイルスの病原性が非常に高い、有効な特効薬がまだないというウイルス自体に由来する原因に加え、文化的、地理的、政治的要因も関わってくるんですね(図6)。

図6(図版提供:南保明日香教授)

 
地理的要因でいえば、人が活発に移動し国を越えて簡単に行き来しているため、いろいろな国を通じて感染が拡大してしまうこと。政治的要因としては、今、コンゴでは内乱が起きているので、外から医療チームが入ったとしても武装グループなどに阻まれて医療チームが本当に苦しんでいる人に直接的に貢献できない、そういった原因があります。
さらに、文化的要因もあります。例えば「伝統的埋葬法」。エボラウイルスは体液を介して接触感染でうつるので感染した人を触ってはいけないのですが、アウトブレイクが起きた地域では、亡くなった方を遺族がさすって弔うという伝統的な習慣があったんですね。ウイルスに対する知識がないと、普通に死んだ人と同じように扱ってしまうので、遺族に感染してしまうことになります。
このように、いろいろな要因が複雑に絡み合っていることが、エボラアウトブレイクの制圧がなかなかうまくいかない原因となっています。
エボラアウトブレイクの背景って複雑!

松竹 絢音(まつたけ・あやね)(高校1年生)