公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第18回
ようこそ言語脳科学の世界へ
自然科学で言語を解明!

序章 自己紹介

酒井
ようこそ、酒井研究室へ。まず、自己紹介をお願いします。
古性
古性栞(ふるしょうしおり)と言います。将来の夢は中学の社会科の教師になることです。好きな科目は地理で、今すごく頑張っています。よろしくお願いします。
石葉
こんにちは、石葉美凪(いしばみなぎ)です。将来の夢はまだはっきり決まっていないのですが、何か研究ができたらいいなと思っています。興味がある学科は生命科学です。
大石
大石稟(おおいしりん)です。私は人と話したり、コミュニケーションすることにすごく興味があるので、心理学を専攻して学びたいなと思っています。また将来は、それを生かせるようなことがしたいです。よろしくお願いします。
酒井
皆さんは高校1年生ですね。
一同
はい。
酒井
私は言語脳科学を研究していますが、いきなりこの分野に入ったわけではありません。高校時代に物理に興味を持ち理学部に進学しましたが、専攻を決める大学2年のとき、突然、生物学がやりたくなりました。物理学科でも生物が学べるのか調べてみると、生物物理というのがあった。境界領域というか、物理にも生物にも片寄らない分野ですね。
実際に行ってみると、情報科学やAI(人工知能)のように、脳を理解することで人間を理解しようといった方向が見えてきました。生物学というより医学部の脳生理学の領域かな。大学院では神経科学をメインでやったのですが、皆さんが自己紹介でおっしゃった生命科学や心理学にも近いですね。あ、地理がなくてごめんね(笑)。
言語脳科学がカバーする分野は広く(図参照)、図の右側は文系、左側は理系という感じ。最初はサルで脳の研究をしていましたが、心理学や哲学にも興味を持つうちに、だんだんと関心が人間に移っていきました。

言語脳科学がカバーする学問分野

酒井
大学院卒業後、ボストンで研究を始めたころ、マサチューセッツ工科大学に言語哲学科があることを知りました。そこにノーム・チョムスキー(Avram Noam Chomsky)という言語学者がいて、非常に影響を受けました。その先生いわく「言語学は物理学である」。今まで文系の学問と思われていた言語学を、初めて自然科学である物理を基礎とした考え方につなげた人です。対極にあった学問が一周回って一番近い学問であるとわかり、物理をやってきてよかったなと思いましたね。
ということで、「あなたの専門は何ですか」と聞かれたら、これだけある(図参照)。これを今の大学でやろうとしたら、まず理学部に入って物理や生物をやり、医学部に入り直して生理学や神経科学、それから思いきり文転して言語学や心理学をやってと、まったく異なる学部を渡り歩くことになります。私がいる駒場キャンパスは「文理融合」を謳い、理系も文系もあり、いろいろな先生がいらっしゃるので、居心地がよかったのかもしれません。右の本の表紙に写っているのがチョムスキー。1928年生まれで、90歳を超えた今も現役でバンバン研究しています。
生徒
えー、すごい。
酒井
彼は私が一番尊敬する先生で、物理学におけるアインシュタイン(Albert Einstein)のような存在です。

酒井先生の著書。右の本の表紙には尊敬するチョムスキー先生が!

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