公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第19回
思わず引っかきたくなる「かゆみ」
その基本的なメカニズムを学ぶ

第2章 自分の肌をチェックしてみよう!

鎌田
お話はここまでにして、簡単な実験をやってみましょう。2つ用意しました。一つは皮膚のバリア機能を調べる実験で、もう一つは肌の敏感さを調べる実験です。
まず、皮膚バリア機能の評価法ですが、経皮水分蒸散量(Transepidermal water loss:TEWL)、つまり皮膚からの水分蒸発量を測定する方法です。皮膚バリアが壊れているほど水分がたくさん蒸発するので、バリアが壊れていると高い値になります。
ただし、湿気が多いとか、皮膚の表面に汗をかいていたりすると値が変化しやすいので、正確に測るには汗をかいてない状態で一定湿度の場所で測る必要があります。
 
このグラフは、セロファンテープを皮膚に貼って剥がす「テープストリッピング」によってTEWLがどのぐらい増えたかを測定した例です。横軸がテープストリッピングの回数、縦軸がTEWLの測定値。貼って剥がすを繰り返すにつれ皮膚バリアが壊れていくので、TEWLの値がどんどん上がっていきます。
私たちが実験で試すとしたら、4、5回が限度ですね。これ以上やると表皮の奥のほうまで剥がすことになり、侵襲(しんしゅう)がある実験になってしまうので、4回ぐらいまでで試してください。アトピーの人がいたら、健康な人の皮膚と比較すると、その差がわかりやすいと思います。
 
2つ目が、肌の敏感さを測る「かゆみ過敏」についての実験です。普通ならかゆみを起こさないような弱い刺激、つまり衣服がこすれたり、ウール素材のチクチクした刺激でかゆみが起きることを「アロネーシス」といいます。乾燥肌やアトピー性皮膚炎では、この現象が認められます。
 
過敏のレベルを評価する方法に、von Frey(フォン・フレイ)テストがあります。太さの異なるフィラメント(ナイロン製の1本の繊維)を、細いものから段階的に皮膚に垂直に押しつけ、かゆいと感じる閾値(いきち)を測定します。細いフィラメントから順に当て、かゆみを感じたのはどの太さのフィラメントか。また、そのかゆみが、かゆみなしを0、想像される最悪のかゆみを10としたとき、どれぐらいのレベルだったかを判定します。細いフィラメントで強いかゆみが起こるようであれば、かゆみ過敏だということがわかります。
 
※感覚や反応を起こさせるのに必要な最小の強度や刺激などの値。

実験の様子

測定器の使い方を教えていただき、セロテープを自分の肌に貼って剝がすを繰り返し、その都度、TEWLを計測

今度はかゆみの過敏の実験。4種類のフィラメントを順に手首に押し付け、感じたかゆみの程度を数値で記入

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