中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」
第22回
病と形から生物の本質に迫る
海の哺乳類と向き合う熱き研究者
序章
自己紹介
- 井上
- 竹園高校2年の井上春胡(いのうえはるう)です。教科の中では生物が一番好きで、体の仕組みや細胞がどうなっているのかを学ぶのがすごく楽しいです。先日、筑波大学で麹(こうじ)菌を使って代替肉(代替プロテイン)を作る研究を見学したのですが、とても面白いなと興味を持ちました。将来はバイオテクノロジーの分野に進みたいと思っていて、大学でもそういう研究がしたい。先生の本を拝読したのですが、すごく面白かったです。ストランディングのことはほとんど知らなかったので、こういう世界もあるのかと驚きました。それと、本の中で先生がいきいきされていたので、大人になるのも楽しいかもと思いました。今日はよろしくお願いします。
- 林
- 竹園高校2年の林美緒(はやしみお)と申します。私も井上さんと同じく生物を選択していて、すごく好きな教科です。あと、海洋生物がめちゃくちゃ好きで、中でもイカやタコなどの無脊椎(せきつい)動物が面白いなと思い、筑波大の生命環境学群生物学類を目指しています。
- 田島
- 海洋生物だったら東京大学の柏キャンパスとか東京海洋大学の方が専門的かな。頭足類なら北海道大学でも研究が盛んです。目標が決まっているなら、ぜひ頑張って!
- 林
- 分かりました。ありがとうございます。
- 田島
- 私は国立科学博物館(以下、科博)の動物研究部に所属していますが、動物研究部には脊椎動物、海生無脊椎動物、陸生無脊椎動物の3つのグループがあり、私は脊椎動物の中の海の哺乳類を担当。海の哺乳類について科博の3本柱である「調査・研究」「標本資料の収集・保管・活用」「展示・学習支援」を行っています。
何を研究しているかというと、私は獣医大で病理学を専攻していたので、病気にまつわるいろいろなこと。あと博士課程では解剖学、形態学を専攻していたので、形にまつわることと、病にまつわることを専門として進めています。ただ、それだけでは博物館の仕事ができないので、何でもですね。海生哺乳類学はもちろんのこと、基礎生物学から対象となる生物の生活史まで、とにかく専門家として頑張っていかなければならず、日々吸収しているところです。その研究資料をどうやって入手するかですが、海の哺乳類の場合、自ら海岸に打ち上がってくる個体たちを活用して標本にする、研究資料にする、展示・普及に使うということを20年以上やっています。