この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」第10回 海上自衛隊から細胞老化研究に取り組む異色の生命科学者 財団法人癌研究会 癌研究所がん生物部部長 原 英二 先生

この人に聞く「生命に関わる仕事っておもしろいですか?」 第10回 海上自衛隊から細胞老化研究に取り組む異色の生命科学者 財団法人癌研究会 癌研究所がん生物部部長 原 英二 先生

Profile

原 英二(はら・えいじ)
1983年 青雲高等学校(長崎県)卒業、1987年 東京理科大学 応用生物科学科卒業、1993年 同大学院博士課程修了(理学博士)。(米)University of California, Berkeley・ポスドク、(英)Imperial Cancer Research Fund Laboratories・ポスドク、京都府立医科大学・講師を経て、1998年(英)Paterson Institute for Cancer Researchにおいて研究室長として独立。 2003年 徳島大学 ゲノム機能研究センター・教授。 2008年より現職。細胞老化の分子機構の解明を通して老化(加齢)と発癌の関係を明らかにすることをめざしている。

profile
生命科学分野の研究者になるためには、さまざまなアプローチがあるし、それぞれの研究者によって多彩なキャリアパスがある。しかし、大学院の修士課程修了後に、海上自衛隊に入隊し、再び研究者に戻った原英二先生は、まさに異色の生命科学者だ。

理科、算数は得意。国語、社会は嫌いだった

───どんな子ども時代を過ごされたのですか。

熊本県の八代という田舎町で育ちました。自転車で20分も行けば海や山があり、自然の中をかけまわっていました。そんな環境だったから勉強などあまりしなかった。毎日、外で遊び回っていました。
けれども、小学校5年生の終わり頃、親から私立中学に進学するように勧められ、近所のお姉さんに勉強を教えてもらうことになったんです。その方は早稲田大学文学部を出て郷里に帰ってきていた女性でしたが、東京の文化の香りが漂っていたんですよ。子ども心に、こんな田舎と違って、東京にはいろいろおもしろそうなことがあるんだなぁと(笑)。

───その先生からはどんなことを教わったのですか。

私はどちらかというと国語や社会は苦手で、理科や算数の方が好きだった。社会は歴史の年号を覚えるのがだめでしたが、理科や算数は原理を覚えておけば答えが出るところに魅力を感じていたんです。先生は勉強の合間にいろんなことを話してくれました。例えば、東京での生活の話や、イタリアに旅行した時の話。また、宇宙のロマンなどについても聞かせてくれました。米国にはNASAという宇宙を研究する機関があると聞かされ、それなら将来はNASAの研究員になろうかなんて考えたりしたんですよ。もちろん、小学生の夢に過ぎなかったのですが。

───めざす中学校には、無事合格できました?

ええ、熊本市にある私立中学に入学したのですが、その後長崎にもっとレベルが高い中高一貫の学校があると知り、しばらくしてから長崎の学校に転入学しました。その学校は生徒の多くが医学部に進学するような受験勉強中心の学校だったのですが、その一方でかなり自由な雰囲気もありました。私は寮に入ってたんですが、夜には寮を抜け出して何か食べに行ったり(笑)、高校生活を大いに楽しみましたね。寮では友人たちといろいろ話をしましたが、そこで話題になっていたのが、遺伝子工学でした。近い将来、遺伝子を自由に組み換えることで、いろいろなことができるようになる、すごいことだなんて語り合ったものです。
そんな中で、将来どんな道に進もうか考え始めていた時、たまたま書店で目にした、確か題名が「生命の設計図」という遺伝子工学、今でいえば分子生物学の本を読んだんです。

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