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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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医学や薬学の知識も増やし医用工学の研究で独立

———大学院後のキャリアはどうやって決めましたか。

大学院で博士課程に進学することは、学部生のときから考えていて、修士課程のときに正式に決めました。ただ、博士課程を終えた後に、アカデミアとして研究をするのか、企業に就職するのかについては、あまり考えていませんでした。
もう少し研究を続けたいという気持ちは強かったので、日本学術振興会の特別研究員(PD)に申請することにしました。当時の規定で、PDの申請には、研究分野を変える必要があったこと(現在は大学移籍も必要)もあり、実際の医療現場で使えるモノをつくるために今の自分に足りない分野は何だろうと考え、生体に関する知見や生体を扱う技術を学ぶことができる研究室を探しました。
そこで、東大の浦野泰照(うらの・やすてる)先生の研究室に行こうと決めました。浦野研究室では、生体の特異的な環境に応答して、蛍光を発することができる「機能性プローブ」の研究を行っています。浦野研に所属していた約2年間で、低分子合成と評価、細胞実験などの技術とともに、生体情報に関する知見や研究のアプローチの仕方を学びました。研究分野が変わると、こんなにも研究のアプローチが異なるのだと、とても新鮮でした。

———一方で、独立をめざして自分の研究テーマも絞らなければなりませんね。

そうですね。習得してきた知識や技術を生かして新しいDDSを開発できないかと考えていました。通常、DDSは血管を利用した全身投与型が多いのですが、局所的な治療で使用するDDSもあります。私が注目したのは、後者のDDSで、熱や光といった物理エネルギーと組み合わせて効率性や応答性に優れたシステムを作れないかと考えました。ただ、私の考えるものが実際の医療で使えるかはわかりません。この点に関しては、東大の医用精密工学研究室の佐久間一郎(さくま・いちろう)先生の研究室に講師として着任してから、医療従事者の方の意見を伺う機会を設けて改善してきました。佐久間先生は医療機器の開発をされていて、私の研究についてもサポートしてくださいました。