中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

蛍光タンパク質によるバイオイメージングが大ブレイク

「サイエンス」誌の表紙

1994年2月11日発行の「サイエンス」誌の表紙に、GFPの遺伝子を導入され緑色に光る線虫の写真が載った

下村博士のGFPが生命科学の分野で注目を集めるようになったのは、オワンクラゲの採集からおよそ30年を経た1990年代初頭のことである。1992年に、GFPをコードする遺伝子の単離が発表され、1994年には、コロンビア大学のマーティン・チャルフィー博士が、線虫の神経細胞をGFPで光らせたと発表した。

「もともと線虫には蛍光物質がありません。そんな生物においても、遺伝子組み換え技術を使ってGFPの遺伝子を導入するだけで、ねらった細胞を光らせることができる。GFPが自ら蛍光活性を獲得することを証明する画期的な発見でした」

GFPの蛍光で光った実験生物は線虫だけではない。酵母、植物、ショウジョウバエ、魚、マウスなどにもGFP遺伝子が導入された。また、細胞内にある細胞骨格、ミトコンドリア、核、小胞体などの小器官、さらに特定のタンパク質などもGFPの蛍光で標識できることを示す研究が相次いだ。

オワンクラゲGFPの三次元構造

オワンクラゲGFPの三次元構造
缶のような構造の中にある緑色の部分が発色団

GFPは緑色の蛍光を発するタンパク質だが、では、緑色以外の色に光る蛍光タンパク質はつくれないものだろうか。この研究に取り組んで成果を上げたのが、カリフォルニア大学サンディエゴ校のロジャー・ツェーン博士である。

GFP は、238個のアミノ酸が鎖のようにつながったポリペプチドが折り畳まれて缶のような形をしている。光の吸収や蛍光の放出にとって一番重要である発色団は缶の中心に位置する。ツェーン博士は、これら238個のアミノ酸のいくつかを変えることによって色の違う蛍光タンパク質をつくることができることを発見した。すなわち、BFP(青色蛍光タンパク質)やCFP(シアン色蛍光タンパク質)、YFP(黄色蛍光タンパク質)などをつくりあげた。

「GFPに加えて、BFP やCFP、YFPなどの蛍光タンパク質を使うと、複数の分子や細胞を別々の色で標識することができるようになりました。バイオイメージングの可能性が大いに広がりました」

こうして蛍光タンパク質による生命科学研究は一気にブレイクする。

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