公益財団法人テルモ生命科学振興財団

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

人間の筋肉のように膨らみながら収縮する“柔らかいロボット”

一方、人間の筋肉のような柔軟でパワーのある人工筋肉をつくりたいと開発したのが、「空気圧ゴム人工筋肉」だ。
「人間の筋肉って何の力も入れてないときはとても柔らかい。ところがガッと力を入れると硬くなります。ロボットというと“硬いもの”というイメージがありますが、人間をはじめ生物や生体の機能から学ぶ“柔らかいロボット”をつくろうと開発したのが、生物の筋肉のように柔軟・軽量で大きなパワーが得られる空気圧人工筋肉です」

空気圧ゴム人工筋肉そのものはこれまでにもあった。現在広く利用されているものの代表例が1961 年にJoseph McKibben によって開発されたMcKibben 型人工筋肉である。ゴムチューブを網で覆い、両端を固定したシンプルな構造のものだ。しかし収縮率が20数%と人間の筋肉の収縮率に比べて若干小さいことや、ゴムチューブと網が擦れることによってゴムが磨耗してしまい寿命が短いなどの問題点があった。中村研究室が開発した人工筋肉はMcKibben 型と比較して4倍以上の力を出力でき、軽量で柔軟性があり、安価というのが特徴という。
いったいどこに、パワーの秘密があるのだろう?

「ポイントは、ゴムチューブの軸方向にマイクロカーボン繊維層を内包したことです。ふつうのゴムチューブに空気を送り込むと、風船のように軸方向にも半径方向にも膨張してしまい、パワーが弱まってしまう。それに対して軸方向に細かい繊維を入れることによって、軸方向には膨らまずに半径方向にのみ膨らむようになる。このとき、繊維の長さは伸びないので軸方向に収縮する力を得ることができるんですね」
 現在、収縮率にして38%、2000ニュートン、最新のものは4000ニュートンもの力が期待できるという。
「人工筋肉そのものは50g程度、それで200kgもの力が出せるわけです。工場や流通現場、農作業などで重い荷物を楽に運ぶためのパワーアシストスーツへの活躍など、さまざまな応用が期待されています」

空気圧ゴム人工筋肉(軸方向繊維強化型)の原理
図版提供:中村研究室

空気圧ゴム人工筋肉の収縮の様子(動画提供:中村研究室)

研究室では、この空気圧ゴム人工筋肉と、磁場を加えることによって摩擦に頼らずに減速させることができる「MR流体ブレーキ」とを組み合わせ、人間の関節と同じように弾性や粘性を変化させながら、歩行や跳躍をアシストするデバイスを開発した。空気圧を送り出す装置を携帯することによって、従来のモーターつきの重いパワーアシストスーツとはまったく異なる発想のウェラブルアシスト装置が実現できるという。

可変粘弾性下肢アシスト装具「Airsist」

このほか、ジャンプロボットなど、ぼくたちの運動機能を拡張してくれるロボットも開発しているんだって。

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