公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

体内時計の「時計あわせ」の仕組み

ところで、昼と夜が区別できない真っ暗な場所にいても、この24時間のリズムは保たれるんですか?

体内時計が刻む概日リズムは自律的なもので、外部からの光刺激がなくても約24時間の周期を保ちます。窓がなく外からの光が差し込まず、照度が完全にコントロールされていま何時なのかの手がかりのない隔離実験室で何週間も過ごしてもらうという実験をすると、ヒトの場合、24時間強の規則的な周期を刻むことが分かっています。

札幌市内にある時間隔離実験室の内部
面積は24㎡、天井の高さが2.3mで、トイレ、シャワー室がある。壁、天井、床は防音で外からの音がシャットアウトされている。窓がないため外光は入らない。蛍光灯はあるが、モニタールームから点灯・消灯の操作や照度の調整が行えるようになっている。

ヒトの周期が24時間よりちょっとだけ長いとすると、地球の自転をもとにした時間と少しずつズレていくはずですよね。周期を24時間に合わせる何らかの仕組みがあるのですか?

ズレを修正するいくつかの仕組みが知られています。最も重要なのは、目から入る光です。

光はどのようにしてズレを修正するんですか?

ヒトの網膜にある「メラノプシン」と呼ばれる光受容体が体内時計の修正に重要な働きをすることが明らかになっています。外界の光環境の変化をキャッチして、光情報のシグナルを視交叉上核の細胞群に届けて、時計あわせをするんですね。このメラノプシンは、とくに朝の太陽光に含まれる青色の波長域の光を受けると最も活発に働きます。
このほか運動なども、体内時計のズレの修正に有効だといわれています。

ということは、朝寝坊のケンタ君には、朝寝床から引っ張り出して朝の光をいっぱい浴びてもらい、私と一緒にラジオ体操をするのがいいかもしれない!

それはいい考えですね。海外旅行などで経験する時差ボケは、日本で過ごしていたときの生活リズムと渡航先の時間がズレていることから、夜になっても眠れないとか、日中に眠気に襲われたりするものですが、最近の研究で運動と同時に明るい光を浴びるのが時差ボケに効果的だということが報告されています。

それにしても、夜遅くまで明るい部屋で過ごしていたり、夜中までコンビニでアルバイトをしたりと、現代の生活は体内時計を狂わせやすいのかもしれないなァ。

夜中の光は体内時計を夜型にずらしてしまうんですね。体内時計を正常に保つためには、規則正しい食事なども大切です。そして、夜中の食べ過ぎにも気を付けてください。

メラトニンと体内時計

メラトニンは、脳の松果体から分泌されるホルモンで、睡眠を誘導する働きが知られている。メラトニンの合成と分泌は体内時計のコントロール下にあり、昼間は分泌が少ないが、夜にさかんに合成される。メラトニンの分泌量が増えると、深部体温、血圧が低下し、脈拍が弱くなり、眠りに誘われる。逆に、メラトニンの分泌量が少なくなると、体温や血圧、脈拍が上昇し、睡眠から覚醒モードに切り替わるのだ。
ただし、メラトニンの生成は視交叉上核の時計情報だけでなく、網膜から入る光の量によっても左右される。強い光によって分泌量が減少するという。したがって、深夜勤務や夜遅くまで起きているといった生活を続けると、メラトニンが適切に分泌されなくなり、不眠症などの睡眠障害の原因になるといわれている。
メラトニンの生成は、幼少期にピークを示し、その後分泌量が減少していく。高齢になると睡眠時間が短くなるのは、メラトニンの生成量が落ちてくることも関係しています。