公益財団法人テルモ生命科学振興財団

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

出生後に爆発的にシナプスが形成される

赤ちゃんが生まれてからは、脳にはどんな変化が起こるんですか?

胎児期に脳の神経細胞(ニューロン)の配線がある程度完成すると言いましたが、これはあくまで構造ができたということです。工事が終わったばかりのビルにたとえると、ハードウエアとしてビル内の配線工事は終わったけれど、まだ入居者が少なく、本格的に使われていない段階ですね。

つまり、配線は準備できているけれど、電気のスイッチが入っていない状態だって考えればいいのかな。

そう考えると分かりやすいかもしれませんね。みなさんは、ニューロンとニューロンをつなぐのがシナプスだということは習いましたね。シナプスは、赤ちゃんが生まれてから実際の活動を通して作られていきます。シナプスが形成されるスピードは実に爆発的で、途方もない数のシナプスが作られるんですよ。そして視覚や聴覚などに対応して、特定の場所がそれぞれの機能にかかわる活動を担うようになっていきます。たとえば、視覚だったら後頭部の視覚野が、音を聴いているときには左右の側頭葉が活動をするわけです。
こうして脳の機能領域が少しずつハッキリしていくので、生後2-3か月ごろを境に、まだ言葉をあやつるわけではありませんが、まわりからの働きかけに反応してコミュニケーションできるような基盤ができていくのです。

3か月児の脳の機能分化
3か月児になると、外からの感覚刺激に対して、大人と同じような部位が反応する

視覚刺激視覚野

(Taga et al.PNAS 2003)

複雑な視覚刺激後頭葉外側部

(Watanabe et al.NeuroImage 2008)

新しい刺激への注意前頭前野

(Nakano et al. Cereb Cortex 2009)

シナプスは増えていく一方なのですか。

生まれてから8-9か月ごろまではぐんぐん増えます。その後もシナプスは絶えず作られますが、「シナプスの刈り込み」といって、一方で余分なシナプスが壊されて情報が伝わりやすいように整理されていくんですね。ですから、作られる数と減ってしまう数のバランスによって、シナプスの総量は8-9か月でピークを迎えたあとは減っていき、一定の数量になって落ち着きます。
それ以降も、それぞれの人の行動や経験などに応じて、脳は少しずつ変化し、生涯を通して変わっていくのです。

ヒト大脳皮質におけるシナプス数の発達変化

(Huttenlocher, et al., Neurosci.Lett.1982を参考に作成)

これまでお話したことをまとめると、このような流れになります。

※1脳回:発生が進むプロセスで、皮質領域が成長しながら折り畳まれて、凹凸ができる。脳の溝と溝との間の出っぱり部分が脳回。
※2白質線維:白質は脳と脊髄からなる中枢神経組織の中で、ニューロンの連絡路(軸索)となる神経線維が集まっていて、白く見える領域。

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