公益財団法人テルモ生命科学振興財団

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

新生児の脳のシワは大人そっくり!

やあ、みんな、よく来てくれたね。私もみんなと同じように赤ちゃんがどんなふうに成長していくのか、赤ちゃんの脳について知りたいと研究を進めているんですよ。赤ちゃんの脳については、まだまだ分からないことが多いのですが、最近は測定機器も進歩してきたので、赤ちゃんの脳の中で何が起きているのか、かなり解明されてきたんです。

先生、受精卵が分裂して、やがてからだのさまざまな機能が分化いくことは、学校でもウニやマウスの例で習ったことがあるんですが、人間の赤ちゃんの脳がどんなふうに発達していくのかよく分からないので、まずそこから教えてください。

ヒトで受精卵から時間経過を追って体系的に紹介しているものは意外に少ないので、キミたちがよく分からないというのも無理はないんですよ。大まかにいうと、(1)胚子(はいし)(~8週)、(2)胎児(~38週)、(3)新生児(生後1か月ぐらいまで)、(4)乳児の4段階に分かれます。

(1)胚子
(2)胎児
(3)新生児
(4)乳児

胚子というのは、どういう段階なのですか?

精子と卵が受精することでヒトの発生が始まりますが、その後ものすごいスピードで細胞分裂が起こり、3-8週ぐらいのほんのわずかの間に、顔や手足、指、臓器など人間の基本的な器官が形成されていきます。脳についても8週ごろまでには、大脳や中脳、小脳、延髄、脊髄など、それぞれの形の基盤ができるんですね。

8週ごろの胚子の大きさってどれくらいニャン?

わずか2.5cm弱なんですよ。

へぇ! そのときの脳ってどんな形をしてるんですか?

右と左にそら豆みたいな形をしたものがついていると言えばいいかな。

形ができはじめたばかりといった状態なんですね。

8週以後、赤ちゃんが生まれるおよそ38週までが胎児期です。お母さんの子宮の中で脳はぐんぐん成長を続けていって、とくに後半には大きなイベントが2つあります。

いったいどんなイベントかニャ?

ひとつはシワができること。25週ぐらいまでは、脳の表面はツルツルなんですが、表面積を増やすためにシワが増えていきます。新聞紙をクシャクシャに丸めて固めたような状態を想像してみてください。そして生まれるころには、大きさこそ成人の3分の1ぐらいですが、脳の形そのものは、大人とあまり変わらないような状態になるんです。この図をご覧ください。この図では、大人と比較しやすいように新生児の脳が大きく描かれているんですが、外から見るとそっくりでしょう?

ほんとだ! ぼくは赤ちゃんの脳はシワがほとんどなくて、大きくなって勉強をいっぱいすると、シワがたくさんできて、深くなっていくのかと思っていたよ!

ケンタ君のように思っている人も多いかもしれませんね(笑)
形が似ているだけではありません。この時期には、神経細胞同士をつなぐための軸索のネットワークが、脳にシワを刻みながら着々とできていきます。13週以降の胎児の脳をMRI(磁気共鳴画像。強い磁石と電磁波を使い体内を輪切り状態に画像化する装置)で観察すると、どことどこがつながっているかや、配線ができていく様子が分かるんですよ。

ひゃー!すごいもんだニャ。

こうして赤ちゃんは、外部の感覚情報が脳に入ってくるような神経の回路網がある程度完成してから生まれてくるんですね。

質問なんですけど、よくおなかの赤ちゃんに、音楽を聴かせたり話しかけたりするといいなんてことが言われますが、胎児のうちに回路網がある程度できていくってことは、赤ちゃんはそうした情報を受け取ることができるってことですか?

うーん、胎児は子宮の中でさまざまな感覚刺激にさらされて成長を続けていますから、極端に異なる刺激があれば、何らかの違いが生まれることもありうるかもしれませんが、それがいいことかどうかも含めてよく分からないというのが正直なところです。

ヒト胚子・胎児における脳神経系の形成

京都大学大学院 医学研究科 附属先天異常標本解析センター の山田重人教授のグループは、11個の胚標本と、CRL(クラウンランプ長=頭殿長。頭からお尻までの長さのことをいい、座高だと考えればよい)5.2mmから225 mmの8個の胎児標本の磁気共鳴画像(MRI)を用いて、ヒトの発達中の脳の精巧な三次元モデルを再構築している。大脳や小脳などの領域の境界が作られた後に、特に大脳皮質が急激に成長する様子がよく分かるだろう。

(Yamaguchi et al. Congenital Anomalies, 2017より図を一部改変)

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