公益財団法人テルモ生命科学振興財団

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

二本足歩行の研究から赤ちゃんの脳の研究へ

赤ちゃんの脳ってとても不思議で、まだまだ分からないことも多そうだし、それだけに研究対象としてはとても魅力的です。多賀先生はなぜ、赤ちゃんの脳を研究しようと考えたんですか。

高校生のころ、物理などに興味がありました。大学の教養学部のときに、生命現象を司る原理を物理学のようなアプローチで捉えようとしている清水博先生の研究に惹かれました。そこで、研究室に入り、自発性をキーワードに脳を探究しようと考え、まず二足歩行の研究に取り組んだのです。

へえ、二足歩行と赤ちゃんの脳の研究ってなかなか結びつかないなあ。

ヒトが歩く機構は、脳がまず自発的なリズムを作り、それと身体や外部の環境などが相互作用することによって実現します。脳のリズムを作る神経ネットワークと二足歩行のロボットとをコンピュータシミュレーションで組み合わせたら、ひとりでに二足歩行ができると考えたのです。
その後、脳そのものがどう発達するのかをもっと突き詰めて、根本から研究したいと思うようになり、まだ当時はほとんど解明されていなかった赤ちゃんの脳の研究に取り組んだというわけです。

今、どんな研究テーマに関心を持っているのですか。

「腸内細菌と共生」がマイブームですね(笑)。腸内細菌が健康に良いというのはよく知られていますが、発達期の乳幼児の脳に腸内細菌がどのように寄与するのかについては分かっていません。母乳に含まれているオリゴ糖を乳児は代謝することができませんが、乳酸菌などの腸内細菌がいれば代謝して脳をはじめ生体に必要な物質に変えることができるでしょう。
腸内細菌が腸に信号を出し、脳の信号と相互作用しているとおもしろいじゃないですか。そして腸内細菌が脳の構築に物質的に寄与しているとなると、生命の最初の段階から腸内細菌と一緒に生きていることになります。ほかの生物と一緒に個体の発達が進行していくとするなら、それは発達という現象の中に“共に生きる”という要素が初めから組み込まれていることになり、人間にとってほかの物質と共生しながら生きていることの意味を改めて問い直す価値があると思います。

中高校生へメッセージをお願いします。

本をたくさん読みましょう。今は情報が断片化しすぎています。その断片化した情報を一瞬で得て、一瞬で満足してしまう時代になっています。本を読むと、一定の時間、違う世界に浸ることができます。そうした時間に身を置くことで、深く考え続け、ロジックを身につけることができるはずです。
もう一つ、歴史を学びましょう。たとえば、かつての科学者の伝記を調べると、その科学がただの流行りすたりではなく、時代に必然的な発展の流れがあることに気づくでしょう。そうすると、この方向で勉強や研究を続けていくことが必要だと分かるし、自分にしかできないことも見えてくるものです。

本をたくさん読もう
歴史を学ぼう

(2019年7月23日更新)

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