公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第2回
顕微鏡の専門家が
分子モーターから紐解く生物物理学

第6章 研究者への道――不安を抱えながらも楽しむことを大切に

須藤
進路の話になっちゃうんですけど、大学の修士以降で研究者になる経路って、どういうものがあるんですか。
西坂
難しいですね。正直、ほとんど9割9分っていったら大げさかもしれないですけど、9割以上の方が、企業で研究を始めます。それは、どの学部に進むかとか、どの大学に進むかによって違うと思うんですけれども。例えば、うちの学習院の物理学科でいうと、学部生までだと、やっぱり研究職に進む人はまれです。でも修士に来れば、まず、ほとんどの人が研究職に就くっていうことですね。ただ企業の研究職は当たり前ですけど、お金が絡むというか、チームで絶対やるものですから、さっき私が話したような好き勝手にやる研究が面白いよっていう話は、大概、夢物語になってしまいます。チームでいかに成果を出すかっていうことになりますからね。大きくそこで分かれるかな。修士に進むのが、まず研究者としては絶対に必要で、そこからどこかの企業で基礎研究なり、応用研究なりを続けるか、もしくは大学の博士課程に進学して、さらに深く学問の道を突き進むか。そこで大きく分かれるかなと思います。
大学生になると、やっぱり将来の不安の話みたいなのはいっぱい聞くんですけど、高校生のときはまだないですかね?
須藤
結構あります。うちの学校そういうの、既にこの時期に考えさせるような感じで。10年後の自分を見ろとかなんか。
西坂
そんなの高校生時代に考えたことはなかったなぁ。今でも先のことは考え過ぎないようにしてますが、それぐらいがちょうどいいって思うときもあります。将来や結果を意識しすぎると、研究そのものを楽しめなくなりますしね。私の友達なんかを見ていても、すごく能天気で、この実験失敗したら八百屋になるかって言っていたような人が、東大の教授になったりしていますね。実話なんですけど。そういう破天荒な人は、生き残る。破天荒というか、あんまり考えるぐらいだったら、研究を楽しもうって。高校生だし、そんな感じがいいのかなと思いますけど。
須藤
つらいよりは、楽しいほうがやっていけるんだなということですか?
西坂
そうですね。みんな楽しんでいる感じはします。学生さんだから、やっぱり楽しもうって人のほうが、成果は出ている気がするかな。そういう意味では、話があちこちいきますけど、すごく真面目過ぎる人は、うまくもっていかないと、研究を続けるっていうのは逆に大変かもしれないですね。いいかげんな人って、何とかなっちゃうようなところがあるんですけど。
研究って本当に、もしかしたら頭が良くて、すごく真面目で、それしか見えてないっていうような人が、うまくいくのかなって思われているんじゃないかな? でも実は、秀才よりブッ飛んでた人のほうがうまくいっているってこともあるんです。それは一般論でもなんでもない、ただのおしゃべりとして聞いといてほしいんですけど。
高原
あまり将来を限定しすぎないほうがいいのかな。
西坂
あとはせっかくですから、私メールアドレスも公開してますし、学習院って駅前でいい場所でもありますので、興味があったしたら、個人的にメールいただいても、何か返事できると思います。ふらっと遊びに来ていただいても、大丈夫だと思いますので。
一同
マジすか!?
西坂
大丈夫です。今度来たときは、もっと散らかっていると思いますけど。なんか見たいものあったりしたら、連絡してください。そういうのも、面白いと思うよ。高校の生物部で、きっちり先生から話を聞いているだろうから、多分並の大学生より、ちゃんと真面目に取り組んでいると思うんですよね。 そういう人が、こんな実験できないですかねって、真面目に面白いものを提案してくれたら、うちの学生さんなんかも、そういうのをちょっと手伝ったり、そういうことができるような雰囲気は維持したいなと思っています。というまとめでいいでしょうか。」

対談を終えて

( 取材・構成 株式会社リバネス 五十嵐 圭介 )

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