公益財団法人テルモ生命科学振興財団

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中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

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中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」

第8回
研究者のパッションに触れた2時間

第6章 今、若い人たちに伝えたいこと

高井
横須賀高校もSSH(スーパーサイエンスハイスクール)ですが、実は僕は47都道府県のSSH巡りをやろうと思っていて、今までに7カ所行きました。そこで何を話しているかというと、JAMSTECの紹介もするのですが、基本的には何を学ぶべきかという話をしています。高校生って、案外、何も疑問に思わず普通に勉強しているでしょ。ちなみに、君たちは何で勉強しているの? いい大学に入りたいから?
松下
まあ、そうなっちゃう気がします。
高井
僕の思ったとおりの答えを言ってくれたね(笑)。はい、そのとおりです。みんな、そう思っている。で、この前、ある大学の院生たちに同じような質問をしたの。いい企業に就職して、そこそこいい給料をもらって家庭を持ったら、それで幸せですかと尋ねた。そうしたら、院生たちは「幸せです」と。それを聞いて「はあ?」と、40~50人の大学院生を前に僕には怒りしかなかったね。
松下
ということは……。
高井
君たち高校生に怒っているんじゃないんですよ。高校生にとっては当たり前だから。でも、大学院に進学してまでそんな子どもじみたことを考えているのかと、ブチっと切れた。君たちは、ちっぽけな自分の幸せだけのために勉強しているのか? 人は自分の生きる意義とか使命を考えなくちゃ駄目です。大学院まで来て勉強しているのであれば、自分が人のために何ができるかを考えないと。
松下
それを高校生に伝えるために?
高井
そう。ああいった院生になってほしくないから、今から何のために勉強するのかとか、そういうことを考えた上で一生懸命に勉強し、目標とする大学に行ってほしい。それを言いたくてSSH巡りをしています。
今村
高校生の頃はどうだったのですか?
高井
誰? 僕の?
今村
はい。
高井
根っからの科学好きじゃなかったと思う。物理や化学、数学は好きで美しい世界だと思ったけど、それ以上に国語と社会が好きだったね。
松下
じゃあ、何で今?
高井
別に科学者になりたかったわけではなくて、僕は“何者か”になりたかった。要するに、スーパースター、とにかく有名になりたかったんです。たまたま、高校2年の時に利根川進博士が日本人で初めてノーベル生理学・医学賞を取ったので、これからは日本人がノーベル生理学・医学賞を取る時代だとマスコミが盛んに言っていた。それと、大韓航空機爆破事件があり、しばしば東京地検特捜部の検察官がマスコミに登場していて、カッコいいと思ってね。それで、大学は法学部と農学部を受験。だから、動機はけっこう不純かな。
松下
ということは、まあ、たまたま研究者の道を選んだ?
高井
そうです。でもね、研究はばくちです。自分で決めた研究テーマに人生を賭けるんだから。ただ、努力と運があれば、どんな人にでもチャンスはある。
松下
難しくないですか、その運というのは?
高井
信じるしかないでしょう。大きな運か、小さな運か分からないけれども、人には何回か絶対に巡ってくるんです。それを信じて努力できるかどうか。で、「来たーっ!」と思ったら……、小当たりかもしれないよ。それは仕方がない。とにかく、信じて自分の道を進むだけ。
松下
今村
今日はいろいろとアドバイスをいただき、ありがとうございました。

コラム4
パッションに触れて

新しい考え方を持っている先生だと思います。ハイテンションで話されるので、僕も一緒に盛り上がって話してしまいました。楽しかったのですが、それ以上にいろいろなことが学べたと思います。今やっていることにこだわらず、自分のやりたいことはこれからの人生で決めていけばいいんだと考えるようになりました。それにしても、追浜にこんな所があるなんて思ってもみなかった。また行きたい!
松下竜大さん

科学者と直接こんな形で話すことができ、とてもためになりました。また、先生の科学者としての歩みを知り、これからのことを考える上でも勇気づけられました。「しんかい6500」は初めて見ましたが、思ったより人が乗る部分が狭くてビックリ。それと、どの方向でも撮影できるよう多くのカメラが搭載されていることや、ゲームに出てきそうなマニュピュレータに感銘を受けました。
今村洋介さん

第一線で活躍されている研究者と高校生が交流を持つ機会は多くありません。今回は高井博士と生徒2名が直接触れ合う機会を頂き、ありがとうございました。高井博士は、ご自身の研究について高校生に語るというよりも、研究活動とは何なのか、ご自身がどういう思いで研究活動を行っているかなど、ユーモアも交えながら、高校生と対話する形でお話しくださり、参加した生徒たちにとってはとてもよい機会となりました。
高井博士の人柄に触れ、研究に対する思いを生徒たちは肌で感じることができたと思います。今後、SSHの探究活動や科学部の研究活動に向き合う中で、また生徒たちが自分の将来を考える上でとてもよい経験をすることができました。構内を丁寧に案内してくださったJAMSTECの皆さまにも厚く御礼申し上げます。
中垣 匡教諭

整備工場にて。遠くに見えるのは停泊中の深海潜水調査船支援母船「よこすか」

整備工場にて。背後に見えるのは深海巡航探査機「うらしま」

海洋科学技術館内。展示されているのは「よこすか」の模型

整備中の「しんかい6500」を前に記念撮影。中央は引率の中垣匡教諭

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