中高校生が第一線の研究者を訪問
「これから研究の話をしよう」
第10回
ようこそ、細胞建築学の世界へ。
第1章 自己紹介:新型コロナウイルス系統樹作成班、生態系調査班
- 木村
- 皆さん、こんにちは。今日はよろしくお願いします。皆さんは生物に関する課題研究を行うグループだそうですが、簡単に自己紹介をお願いします。
- 石井
- 2年生の石井一久(いしいかずひさ)です。新型コロナウイルスの系統樹作成を通して今後の予測や考察を行うという課題研究に取り組んでいます。生物の分野では、実際の生物がどのように私たちの生活を豊かにしているのかに興味があります。今日はよろしくお願いします。
- 石垣
- 石垣(いしがき)ひかるです。石井君と同じ新型コロナウイルスの研究をしています。新型コロナウイルスは生き残るためにどの部分を強化しているのか、それに対して人間はどう戦略を立てていけばいいのかを考えていきたいと思っています。
生物では主に脳の働きに興味を持っています。もともと心理学に興味があり、そこから心とつながっている脳に興味を持ち始めました。具体的には脳が意識的に信号を出しているところと、自律神経など無意識的に体の中で働いているところ、そこを区別しているのが不思議だなと思っています。


オンライン対談の様子
- 内田
- 高校2年の内田亮太(うちだりょうた)です。ぼくも2人と同じ班で、新型コロナウイルスの系統樹作成を通じて、遺伝子にどのような性質が受け継がれ、それが系統によってどう違うのかをまとめたいと思っています。生物では、生命の根源が垣間見えるような遺伝や再生医療に興味があります。
- 久保田
- 久保田結理(くぼたゆり)です。私は生物2班で、生態系調査を行っています。先日は、学校の近くの山や池の周りにどんな植物が生えているのかを調べ、植物に詳しい方に名前を教えてもらいました。この写真は、韮山代官だった江川英龍が描いた植物のスケッチを見せていただいている様子です。

写真を見せながら説明する久保田さん
- このスケッチと、現在このあたりに生えている植物を照らし合わせ、何がなくなり、何が残っているのかを調べたいと思っています。ちなみに、学校の近くの山と池はこんな感じです。
- 木村
- きれい! いいところですね。
- 久保田
- ありがとうございます。私は食べ物に興味があるので、最初はパンの小麦や酵母の研究ができればと思い生物班を選んだのですが、今は植物に興味を持っていて、これから詳しく調べていこうと思っています。よろしくお願いします。
- 高橋
- こんにちは。高橋(たかはし)コウです。ぼくも生態系調査班です。生態系に興味があって、環境変化で生態系が大きく変わってきていることを学び、生態系に大きな影響を与えるキーストーン種に注目しています。それと、自分で育てているコケや食中植物、ティランジア(エアプランツ)など変わった形態を持つ植物がなぜそうなったのかにも興味があります。よろしくお願いします。
■課題研究に取り組む際の「大きな疑問」は?
- 木村
- まず、新型コロナウイルスの系統樹作成班にお聞きしたいのですが、皆さんが持っている「一番大きな疑問」が、どういったものなのか説明してもらえますか。「これが分かれば面白い」と思うことは何でしょう。
- 石井
- 班のみんなでコロナウイルスの系統樹を作成できればいいなと思っています。
- 木村
- コロナウイルスの遺伝情報はもう手に入っているのですか。
- 石井
- 遺伝研の方々にご協力いただき、配列などの情報は得られています。
- 木村
- 生態系調査班はどうですか。
- 高橋
- 学校の近くにある龍城山周辺の植生についての標本調査と、江川邸に保存されている江川英龍の描いたスケッチとの比較を通じて、どのぐらい在来種が残っているのか、帰化植物がどれくらい勢力を拡大しているかなど、生態系の変化を調べたいです。

生態系調査班の活動風景
- 木村
- 例えば生態系が山の高さによって違うのではないか、昔の記録と今とではここが違うのではないかといった疑問、これをぼくたちの世界では「仮説」と言っていますが、皆さんが証明したい仮説は何でしょう。
- 高橋
- そもそも龍城山の生態系については記録がないので、そこから作ります。
- 編集
- 系統樹作成班の3人はそもそも、なぜ新型コロナウイルスをテーマに選んだの?
- 石垣
- 新型コロナウイルスを取り上げたいと提案したのは私です。課題研究をやる時期に新型コロナがはやったということで少し運命的なものを感じ、このウイルスについて知らなければという使命感が出てきました。そこで、この機会を逃したくないと提案しました。
- 木村
- 系統樹を作ろうと思ったのは、なぜ?
- 石垣
- 最初、重症化する人としない人でどういう違いがあるのか疑問に思ったのですが、「これを解明するのはウイルスの研究者でも難しい」と遺伝研の先生にアドバイスをいただきました。高校生ができるものは何かと考えて、系統樹の作成がいいのではないかと。当初抱いていた疑問は解決しないのですが、系統樹の作成を通じて、人間がこれからどういう戦略をとればいいのかなど、新型コロナと向き合うことができるのではと考えました。

新型コロナウイルス系統樹作成班の活動風景
- 木村
- 生態系調査班はなぜ調べようと思ったの?
- 高橋
- ぼくが生態系に興味があったからなのですが、生まれ育った家が森の中にあり、小さい頃から自然と触れ合ってきました。でも、植物については全然知識がなくて、この機会に植物について詳しくなりたいと思ったからです。
- 木村
- ありがとうございます。いま皆さんに、解き明かしたい疑問は何かということを尋ねたのは、疑問を持つことで研究の目的や方向性がハッキリするからです。自分の疑問を解決していくことが研究なんですね。
皆さんに自己紹介していただいたので、ぼくの研究している細胞建築学がどのようなものか、ぼくはどのような疑問を持っているのかからお話ししましょう。