中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

再生医療をリードする4人の先生方とディスカッション

ディスカッション

モチベーションを高く保つには

参加者
(女性)
みなさん先生方、すごい経歴を持ってらっしゃいますが、やりたいことがない、見つからなかったということもおありになったと思います。その間、どのようにしてモチベーションを高くしていたのか、教えていただけるとうれしいです。
高橋
やはり細かい目標というのはずっとあったんだと思いますね。私は忘れていたんですけど、中学・高校時代の先生にお会いしたとき、私の旧姓は小池とい言いますが、「小池さんは次々と課題を見つけていく人でしたね」と言われて、たしかにそうだったなと思いました。ある目標に到達したら次の課題が見えてくるので休めないんですね。損な性格なんですけど、ちょっとずつでも何らかの目標を立てていたのだと思います。人生の本当の目標が見つかったのが35ぐらいという感じですね。
仲野
仲野
やりたいことのあるなしというのと、何かをしたいというモチベーションのあるなしというのは、僕はちょっと違うんとちゃうかなという気がします。僕自身、研究したいと続けていたけど、33ぐらいから2年ぐらいデータが出なくて、半分、うつ病みたいになってしまったことがありました。そのとき京大の講師やったんですけど、もう辞めようかと思って、ある日夜中の2時ごろに研究室に行ったら、研究室の全員が実験していたんですよ。その光景を見て、これはちょっとやめられへんなと思いました。
田畑先生が言った人脈というのは、別に上の人とかでなくても、学生からも学ぶことがあるし、いろんな意味でサポートしてくれる人がおってやってこれたなという気がします。研究というのはすごいリスキーで、基本的にはなかなか前へ進めへんのです。ハイリスク、ローリターンに近い。そういったところでもやるというのは、ある種の夢ですよね。何かを成し遂げたいという夢がなかったらちょっと難しい。僕自身は38で教授になりましたが、研究を一生続けられるなと思ったのは45ぐらいになってからですわ。それぐらい難しいです。この5年ぐらいはあまり悩んでませんけど(笑)。
ちょっとでも上へ行きたい、テーマうんぬんじゃなくて、そういう気持ちがあればいいんじゃないかなという気がします。
田畑
人間というのは、ときに「ヤルゾー」と気持ちが高揚することがあるし、逆に、何かしらんけどうまいこといけへんなと落ち込むときもある。でも、だめやなと思っててもやりたいことは絶対あるんですよ、大きい小さいはあってもね。その中で、できそうなことを僕はずっとやってきました。夢のサイズは関係なく、小さくてもいいからやり続けることが大事です。
それと、仲野先生が言われた通り、ネットワークというのは自分より上の人にひっぱってもらうだけではなくて、友だちもそうだし、学生さんもネットワークなんですね。まわりを見て、自分だけが悩んでいるんじゃないと自覚するといいと思います。
仲野
今、田畑さん言われましたけど、悩みを共有するというのはものすごく大事ですね。みんなしんどいですよ。でも言わへんのですよ。僕はへたれですからしょっちゅうぼやいて、同じようなシチュエーションの人に悩みを言うのが僕の悩み解消法やね。
高橋先生がおっしゃったけど、子育てしながらやっている女性研究者というのは共通の悩みが多いですから、やっぱり恥ずかしがらんとね、私こんなのしんどいわって、だいたい同じ悩み持っているから、そうやって僕は乗り越えてきましたね。
大和
僕はモチベーションをキープするのに2つのキーポイントがあると思っています。1つは、今、臨床応用中心の研究ですので、患者さんたちと接したり、実際困っている患者さんたちが目の前で治るのを見ることができて、これはほかのタイプの研究ではなかなか味わえないことなので、大きなモチベーションになります。
もう1つは、きょうお集まりの先生方のような、こういうすばらしい方々とお付き合いができること。何ものにも代え難いモチベーションの種になります、
それと今、僕らのところに学生さんがいっぱい来て一緒に実験したりするなかで思うのは、中学とか高校とか、もしかしたら小学校でもいいんだけど、小さくてもいいから何か1つ成功体験があると───第三者から見て成功体験かどうかではなくて、自分自身であれは成功体験だなと思えるものが1つでもある学生さんは強いし、モチベーションをキープできている気がします。そうじゃないと、何かこうフラフラしちゃうんですよね。だからみなさん、きっと何か探せばあると思うんですけど、それを自覚的に成功体験と見なしてそれを発展させるのがいいと思います。
仲野
僕はそれについては自信があって、目標掲げますよね。できへんときがありますよね。僕、目標下げるんです(笑)。常に成功している。自分をなぐさめるために。それ、得意です(笑)。
田畑
みなさん信じないかもしれませんが、僕は中学受験、失敗しているんです。小さいころ遊んでばかりいて、小学校の6年間で通知表の5は2回しかない。算数も分数が分かりませんでした。両親は大阪で商売をしていましたので、分数がだめなら商売でけへんのちゃうかという感じで、心配していたようです。だから、その当時、本人も劣等感の塊でした。
高校に入ったとき、母親が中学の先生に合格を伝えに行ったら、ホントかホントかホントかって5回言われた(笑)。大学に入ったときに、中学の先生に息子が成長しているのを分かってもらうために行ったときはホントかって10回(笑)。だからみんなにいつも言うんです。がんばれば、誰でもできるようになるよと。
でも、くじけたときにどういうふうにしていくかというのは、自分でスタイルを決めとかなあかん。仲野先生は目標を下げると言うてはりましたが、僕の場合、目標は上がったり下がったりしているので、そのときに調子悪かったら、下がった目標を考えてそれを一生懸命やればいいと思います。
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