中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

再生医療をリードする4人の先生方とディスカッション

ディスカッション

臨床治療までの時間をもっと短くできますか

大和
ほかにはいかがでしょうか。じゃあ、はい、あなた。
高校生
(女子)
今、日本の医療は外国にも劣らないぐらい先進的になっているんですが、外国より臨床までにかかる時間が長いという問題があると聞いています。将来、外国のように臨床治療までの期間を短くすることはできるのでしょうか。
高橋
これもね、もうどんどん変わってきています。iPS細胞は本当にインパクトが強くて、日本は本気になりました。だから再生医療の分野で世界をリードしていけるような仕組みを今、つくっています。今から新聞を注意深く見ていてください。今年中には再生医療法とか、薬事法も変わるし、再生医療の安全性確保と推進に関する新法というのもつくられます。iPS細胞を臨床応用できるようにするために、厚労省も文科省も経産省も内閣府も本気で環境整備を進めています。7年前にiPS細胞が登場したころは、私たちは世界一流の研究をしているのに政治が一流じゃないといってたんですけど、ここに来てムードが変わってきましたね。
田畑
私たちの研究は、日本の人だけを治すんじゃなくて、全世界の人を治すんですね。だから日本発ということもものすごいいいことだと思うけれども、日本で難しければ先にアメリカとかヨーロッパで治験をやってその効果を実証し、それから日本に持ってくるということも考えなあかんと思いますね。そのためには研究だけじゃなくて、法律のこととか、ほかのことも知っておかなければいけない。せっかくこんなにいい技術があるのに、何でやってくれへんのやと文句を言うだけではダメですね。患者さんのところまで届けるにはいろいろなことが必要であり、国に働きかけたり、日本でだめだったらほかの国でやって、そこから日本にフィードバックするとか、そういうときに多くの人に助けてもらうことが大切です。でも、そのとき、ホントに自分が何をやりたいかという点でブレたらあかん。そこのところは決して揺らがないで、これは絶対やりたいと進めていかないと、なかなか自分の夢がかなえられないと思います。
田畑・仲野
仲野
再生医療はたしかにその通りですが、薬に関しては僕は非常に難しいんじゃないかと思っています。というのは制度的な問題と違って、日本人のメンタリティの問題があるからです。たとえば効果とともに安全性を確かめるために臨床治験をしますよね。日本ではおそらく臨床前の治験でトラブルがあったら大問題になります。その点、欧米では治験で患者さんが亡くなるようなことがあっても、極端な言い方をしたら、はじめからそういう契約でやっているから仕方がないという考え方なんですね。それは制度ウンヌンより考え方の違い、メンタリティの違いであり、薬の認可に関しては欧米にキャッチアップするのはかなり時間がかかると思います。僕がいつも言うのは、小学生ぐらいから考え方を変えていかなあかんから30年はかかると思っています。
田畑
薬もそうなんですけど、人工臓器とか人工血管とかもそうですね。こういう分野で30何年やってきているんやけど、日本というのは、たとえば1回成功しただけでなくずーっと成功して99人成功した。ところが最後の1人に失敗したら全部失敗したことになってしまうんです。99人の成功を忘れてしまう。科学的に実証するということについての捉え方がほかの国とはちょっと違うんですね。1人でも失敗したら全部だめだと思ってしまう文化がありますね、たしかに。
高橋
その点ではマスコミの問題も大きくて、新聞が書いていることとか、テレビで報道していることを鵜呑みにしないほうがいいと私は思います。海外も含めて、いろいろな角度からの意見を見ないとだめですね。
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