公益財団法人テルモ生命科学振興財団

中高生と“いのちの不思議”を考える─生命科学DOKIDOKI研究室

「サイエンスカフェ2021」レポート
再生医療の第一人者による講義や
若手研究者との交流を通じて
「生命科学研究のいま」をオンラインで学んだ3時間

選択肢は数多い。ぜひいろいろなことに興味を持ってほしい

ラボ紹介のあとは、Zoomのブレイクアウトルーム機能を活用し、3グループに分かれての「若手研究者との自由交流」。その後、再び一堂に会して自由討論となりました。

若手研究者との自由交流

アットホームな雰囲気で進行

3つのラボのプレゼンテーションのあと、各校の生徒が3つのグループにシャッフルされ、研究者と自由に話し合う20分間のブレイクアウトルーム。少人数なので参加しているみんなの顔がわかり、アットホームな雰囲気で進行しました。
研究のことや、なぜその分野を選んだのかなど、それぞれのグループによって話題はいろいろです。
ティッシュエンジニアリングのグループでは、細胞シートで移植した組織ががん化することはないのか、培養したミニハムを実際に食べてみたのか、どの藻類を使っているか、組織工学の道に進もうと思ったのはなぜか、といった質問が出ました。
大学はひとつのターニングポイントではあるけれど、大学に入ったあともターニングポイントがいくつかあり、大学や学部が決まったから自分の人生が決定するわけではないと、先生がたが強調していたことが印象的でした。

最先端の手術室SCOTのグループは、モバイルSCOTについて質問が集中。遠隔治療に参加した医師の感想はどうだったのか、もし手術中に機械のエラーが起こったときの責任はどうなるのか、地方の医療のレベルが低いと遠隔で指示しても対応できないのではないか、被災地でもやがて高度な手術が可能になるのかといった疑問のほか、臨床検査技師をめざしているが、SCOTでどんな仕事を担当しているのかというものも。

体内時計と健康グループは、自分たちのふだんの生活に基づいた質問が次々に。寝溜めをよくやっているがダメだろうか、朝のコーヒーはどんな影響があるか、どうしても昼間眠くなってしまうけれど、よい対策がないか。体内時計の観点からは、どの時間に集中できるのか? また、人間の体内時計が24時間より長めに設定されているのはなぜかという根本的な疑問も。理由はまだわかっていないけれど、リセットさせることで体内時計のメリハリを高める進化的なメリットがあるのではないかという仮説があるそうです。
このほか、大学や学部を選ぶ際に重視したことは?高校生のうちにやっておくといいことは?という質問も。これに対しては、田原先生から「分野によって違うけれど、大学院に進むとゼミが英語で行われるほか、スライドも論文も英語。いまはオンラインで英会話を安く学べるなどツールもいろいろあるので、ぜひ英語の苦手意識をなくしておくといい」というアドバイスがありました。

自由討論

質問が次々に

最後のプログラムの「自由討論」は、サイエンスカフェに参加した感想や、将来を考えるにあたって研究者のみなさんに質問してみたいことなど、自由闊達な話し合いの場となりました。進行役は清水先生。Zoomの「手を挙げる」機能を使って、次々に質問が寄せられました。いくつか紹介すると――。
「清水先生の講義では、細胞シートを重ねて器官にすることで役立てていくという話でしたが、細胞シートを重ねて血管をつなげるのにどれぐらいの時間がかかりますか?」
「最先端の手術室について質問です。地域の医療にも大きな可能性をもっているという話を聞いて、まさに自分が興味を持っている分野の話だとわくわくしました。移動式の手術室がどのような形で実現するのか、現在、その計画があるのかを教えてください」
「体内時計についての研究の中で、カフェインをどんどん摂取すると体内時計が遅れていくという話がありましたが、ぼくは夜型で、しかも夜中にカフェインを摂っているので、朝、めちゃくちゃつらいんですが、逆に体内時計を前にずらして朝型に矯正できるような方法はあるのでしょうか?」
「培養肉のメリットは環境への負荷がだいぶ減ること、家畜を育てる場所や飼料となるトウモロコシなどを栽培する土地が必要なくなるということでしたが、培養肉の技術が発展していけば、たとえば宇宙ステーションなどで培養肉をつくって食べることができるようになりますか?」
好奇心いっぱいの高校生からの質問に、各分野の先生方がわかりやすく丁寧に説明してくださっていたのが印象的でした。

先生方からのメッセージ

最後に各先生方や院生のみなさんから、参加してくれた高校生にひとことずつメッセージをいただきました。
清水先生「みなさんがこれからめざす大学受験は、ひとつの目標だと思いますが、ゴールはそこではありません。みなさんにはこれからいろいろな選択肢があり、就職したりしてもそこでまた別の選択肢に出会うこともあるでしょう。人生の中で何度かタイミングがあるので、まずは今一番やりたいことを決めてそれに向かって邁進しながら、それだけに視野を限定することなく、多くのことに興味を持ってほしい。今日のようにいろいろな人の話を聞くと、さまざまなヒントが得られるし、それがまた自分にフィードバックされます。ぜひ、広い視野を持ってがんばってください」

高橋先生「今回はコロナ禍のためオンラインという制限下での開催でしたが、みなさんの人生はこれから長いので、コロナ禍を乗り越えてもっといろいろなことを制限なくできるようになれば、さらに多くの物事に挑戦できる時間があるはずです。これからもいろんなことに興味を持って、刺激のある生活を送ってください」

院生の岡本さん「みなさん、これからいろいろな選択肢が出てくると思いますが、その場で全力を尽くして楽しむことが大切だと思います。ぼくも、数年前までは藻類を活用した培養肉について研究するなんて想像もしていなかったのですが、今この研究に携わってみて、もちろん大変なこともありますが、できるかぎりを尽くしてやっていこうという気持ちになっています。みなさんも、やりたいことが見つかったら全力で楽しんで取り組んでいただけたらと思います」

吉光先生「私が高校生のころの夢は、ちょうどF1が盛り上がっていた時期で、『ホンダでF1をやるぞ』という気持ちでいっぱいでした。ところが大学のときに所属したラボで医療ロボットの研究を知り、その研究をそのまま続けたいという気持ちが大きくなり、そちらに舵を切りました。そのときからあっという間に20年が経ってしまいました。時間が過ぎるのはすごくはやい。ぜひ時間を無駄にすることなく、朝型にシフトして(笑)、がんばって過ごしていただければと思います」

楠田先生「医療系の大学に進んで、アメリカに2週間の短期の留学をする機会を得て、そこでとても大きなことを学びました。アメリカでは、博士を持っている看護師さんはとても積極的に発言しているけれど、ほかの人は発言する機会も与えてもらえない。やがて日本もそうなるのではないかと思い、博士課程に進みました。みなさんは今、いろんな夢を持ってがんばっていると思いますが、柔軟に選択肢を広げて、自分が選んだ道についてその都度全力で成功をめざしてがんばっていただけたらと思います」

田原先生「きょうは体内時計についてたくさん質問してもらいましたが、もっと興味を持ってくれた方はぜひ柴田研究室に遊びにきてください。連絡をくれればいつでも案内しますし、メールで質問があればいつでも答えます。よろしくお願いします」

院生の神藤さん「ふだんお話することができないみなさんとこうやってお話することができて、私自身、とてもいい刺激を受けることができました。ありがとうございました!」

最後にスクリーンショットを撮ってオンラインサイエンスカフェが終了しました。

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