森下泰記念賞 第2回(2022年度)受賞者

大阪大学大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学講座(眼科学) 主任教授
西田 幸二(にしだ こうじ)

略歴

1988年
大阪大学医学部附属病院 医員
1989年
大阪厚生年金病院 医員
1992年
京都府立医科大学 助手
1998年
米国Salk研究所(サンディエゴ)研究員
2000年
大阪大学大学院医学系研究科 助手(眼科学)
2001年
大阪大学大学院医学系研究科 講師(眼科学)
2004年
大阪大学大学院医学系研究科 助教授(眼科学)
2006年
東北大学大学院医学系研究科 教授(神経感覚器病態学講座眼科視覚科学分野)
2010年
大阪大学大学院医学系研究科 主任教授(脳神経感覚器外科学(眼科学))

(2023年3月現在)

受賞理由

西田幸二氏は、角膜に関する基礎研究と臨床経験、幹細胞に関する研究実績を背景に、細胞シート工学との医工連携研究に取り組み、独自の角膜上皮細胞シートの作製に成功、これを患者に移植することで、角膜再生医療の臨床応用を実現されました。角膜移植の課題である、難治性疾患への適応困難、拒絶反応、ドナー不足を解決する画期的な治療法といえます。この成果を、再生医療等製品に関するレギュレーションの整備も十分でない社会環境の下、ヒト(自己)角膜輪部由来角膜上皮細胞シート(2020年)、ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート(2021年)として、薬事承認取得・保険収載へと繋げ、社会実装を実現した功績は高く評価できます。

また、iPS細胞を用いた研究からは、発生学上の観点からも意義が深い、眼全体の発生を時空間的に再現させる世界初の眼オルガノイド系の開発に成功しました。さらに、この眼オルガノイドを利用した角膜上皮組織(角膜上皮細胞シート)の作製・臨床応用に成功、治験に向けた取り組みを進めるとともに、角膜移植の対象疾患で最も多い水疱性角膜症に対する角膜内皮細胞移植の実用化も目指しており、臨床上の期待は高いものがあります。

これらの実績及び将来性を勘案し、“医工連携・融合領域において顕著な業績を上げ、その将来が期待できる方を顕彰する” との森下泰記念賞の趣旨に相応しい者として、選定いたしました。